適応障害で休職を考える際の判断ポイント

適応障害で休職を検討する際は、現在の自分の状態が日常生活・仕事にどのような影響を与えるか、確認するのが大切です。
適応障害は、特定の環境やストレスが原因で心身のバランスを崩してしまう状態とされています。周囲の環境調整が重要になりますが、必要な対応は人によって異なります。
休職の必要性を本人だけで判断するのではなく、現在の状態を医師へ伝え、職場の制度や業務調整の可否も確認しながら考えましょう。
| 確認する場面 | 状態の例 |
| 日常生活 | ● 眠れない ● 食事が取れない ● 家事や身支度が難しい |
| 仕事 | ● 遅刻や欠勤が増えた ● 集中できない ● ミスが増えた |
| 医師の意見 | ● 一定期間の休養や就業上の配慮を提案されている |
まずは心や体に現れているサインをひとつずつ整理したうえで現在の状態を医師へ伝え、職場の制度や業務調整の可否も確認しながら考えましょう。
睡眠や食事など日常生活に影響が出ている
仕事以外の生活にも変化が出ている場合は、心身の負担が大きくなっている可能性があります。
以下のような状態が続く場合は、仕事を休むかどうかだけでなく、医療機関への相談も検討しましょう。
睡眠時間が短くなり、日中も眠気や疲労感がある
食欲が低下し、食事の回数や量が減っている
朝起き上がれず、身支度や家事が難しい
休日も気分の落ち込みや不安が続いている
吐き気や腹痛などの身体症状が中心の場合は、内科やかかりつけ医へ相談するのも選択肢のひとつです。
欠勤が増えるなど仕事を続けるのが難しくなっている
業務でのパフォーマンス低下も、働き方を見直すきっかけになります。主な例は以下のとおりです。
遅刻や欠勤が増えた
集中力が続かない
普段よりミスが増えた
仕事のことを考えると、強い恐怖を感じたり遅刻や欠勤がちになったりすることもあるでしょう。こうした場合は、現在の状態を医師へ伝え、働き方について相談するとよいです。
勤怠や業務上の変化を記録し、医師や上司、人事担当者などへ共有すると、休職や業務調整について相談しやすくなるでしょう。
医師から休養をすすめられている
医師から休養が必要といわれた場合は、現在の症状や仕事の内容、自身の希望をあらためて伝え、必要な休養期間や就業上の配慮について確認しましょう。診断書が発行された場合は、休職の開始日や期間、提出方法は会社の就業規則に沿って調整します。
休職したくない気持ちや収入への不安がある場合は、その旨を医師や職場へ伝えましょう。一方、休むことを自分の甘えや逃げと捉える必要はありません。
勤務時間や業務内容の調整をしても業務をするのが難しい状態であれば、休職を視野に入れることも考えてみましょう。
適応障害で休職したくない場合の考え方

収入減少や同僚への負担、キャリアへの影響などが気になり、休職を避けたいと考える人もいるでしょう。こうした場合は無理に結論を出さず、まずは医師へ現在の状態と希望を伝えてみることをおすすめします。
働き続けることが可能な状態であれば、医師や職場と相談しながら勤務環境を調整できる場合があります。
| 相談する内容 | 対応例 | ポイント |
| 勤務時間 | ● 残業の制限 ● 時差出勤 ● 短時間勤務 |
会社の制度内容と制度を利用できる期間 |
| 業務内容 | ● 業務量の軽減 ● 担当業務の変更 ● 期限の調整 |
負担の原因を減らせるか |
| 職場環境 | ● 配置の変更 ● 相談窓口や産業医の利用 |
必要な配慮を誰に伝えるか |
利用できる制度や配慮は会社によって異なります。状態が悪化してから対応するのではなく、定期的に医師へ相談し、勤務の継続が難しい場合は休職も含めて検討しましょう。
退職や転職を検討する場合も、体調が安定しない段階で急いで決める必要はありません。少しずつ落ち着いてきた段階で検討してもよいでしょう。
また、公的制度の活用も考えたいところです。たとえば、健康保険から支給される傷病手当金を活用すれば、一定の収入を確保しながら療養できます。
傷病手当金は給与の約3分の2が通算1年6ヵ月支給される制度です。会社に籍を置いたまま収入を確保しつつ、療養に専念できます。
こうした制度はもちろん、現在の生活費や希望する働き方を整理し、医師や支援機関とも相談しながら、今後について判断するとよいでしょう。
適応障害での転職についてより詳しく知りたい人は、以下のコラムも参考にしてください。
【4ステップ】適応障害で休職する手続きの流れ

適応障害で休職する際、一般的には以下の手続きを踏む必要があります。
1.心療内科・精神科を受診する
2.就業規則で休職について確認する
3.診断書を用意して休職を申し出る
4.可能な範囲で引き継ぎや連絡方法について話し合う
心身の負担を減らしスムーズに休みに入るためにも、適切に手続きを進めていきましょう。
休職の流れや休職についてより詳しく知りたい人は、以下のコラムも参考にしてください。
1.心療内科・精神科を受診する
まずは、心療内科や精神科などの医療機関を受診して医師の客観的な判断を仰ぎます。初めて受診する場合は、現在のつらさや生活・仕事で起きている変化を、可能な範囲で整理しておくとスムーズです。
また、受診前に、以下のような内容をメモしておくと、現在の状態を医師に伝えやすくなります。
症状が始まった時期や心身の変化
睡眠、食事、家事など日常生活への影響
遅刻、欠勤、ミスなど仕事への影響
職場で負担に感じている出来事や環境
休職に対する希望や不安
休養の必要性や診断書の発行可否については、診察内容を踏まえて医師が判断します。もし会社から指定されている記載事項や提出期限があれば、医師へ伝えましょう。
2.就業規則で休職について確認する
医療機関の受診後は、就業規則で休職について確かめましょう。主な確認項目は以下のとおりです。
休職制度を利用できる条件
休職できる期間と延長の可否
診断書や休職届などの必要書類
休職中の給与、会社独自の手当、社会保険料の取り扱い
休職中の連絡方法と復職手続き
休職期間の上限に達した場合の取り扱い
休職制度の条件や期間は会社ごとに異なるため、気になる点は人事担当者に聞くのが望ましいです。また、休職に入ると会社のシステムへアクセスできなくなる可能性があるため、必要な規定や連絡先は事前に確かめ、控えておきましょう。
3.診断書を用意して休職を申し出る
医師から休養が必要との意見を受けたら、就業規則などで指定された方法に沿って、会社に休職を申し出ます。
上司に伝えるのが難しい場合は、人事担当者や社内相談窓口へ相談してもよいでしょう。
診断書に求められる内容や提出形式は会社によって異なります。提出前に、休養を要する期間、就業上の配慮、提出期限などを確認しましょう。
「病名や症状を職場に伝えるか」「希望する配慮があるか」といった点については、人事担当者と相談しながら決めていくとよいです。
4.可能な範囲で引き継ぎや連絡方法について話し合う
引き継ぎは体調を優先し、無理なく対応できる範囲にとどめます。担当業務や期限、資料の保存先、社内外の連絡先など、業務を継続するために必要な情報を整理しておきましょう。
体調が原因で十分な引き継ぎが難しい場合は、その旨を上司や人事担当者へ伝え、会社側に対応を任せることも検討します。無理をせず、可能な範囲で準備を進めることが大切です。
また、休職中の連絡頻度や連絡手段も事前に確かめておきましょう。連絡窓口を特定の人に絞る、電話ではなくメールやチャットを中心に連絡するなど、療養への負担を抑えられる方法を相談することが大切です。
休職後に復職を目指す際は、リワークセンターの活用が可能です。復職準備をひとりで進めるのが不安な人は、選択肢のひとつとして検討してみてください。
適応障害の休職期間の目安

適応障害の休職期間に一律の基準はありません。休職期間は症状の重さや職場環境、治療方針などによって個人差がありますが、一般的な目安や会社側との調整の流れを理解しておくことで、今後の見通しを立てやすくなります。
このコラムでは、休職期間について3パターンを例として紹介します。必要な休職期間は個人によって異なるため、医師や職場と心身の状態を都度確認しながら検討しましょう。
※以下はあくまで目安です。休職期間は心身の状態や治療方針によって異なるため、必ず主治医と相談しながら検討してください。
1ヵ月以上〜3ヵ月程度の場合
1ヵ月以上休職する場合は、休職直後に休養を優先し、状態が落ち着いてから生活リズムを整えていく流れが考えられます。
休職初期の1ヵ月から2ヵ月は、早く治そうと焦って勉強や転職活動を始めるのではなく、何もしない時間を治療の一環としてつくることが重要です。
心身が落ち着いてきたら、主治医へ現在の状態を伝えます。主治医への相談時点での復職が難しい場合は、診断書の更新や休職期間の延長について会社へ確認しましょう。
2週間〜1ヵ月で復職する場合
2週間から1ヵ月と、比較的短い期間で症状が落ち着く場合もあります。しかし、「気分が少しよくなった」という理由だけで復職を決めるのは避けたいところです
。復職前には、以下のようなポイントを確かめておきましょう。
生活リズムが整っているか
外出後に強い疲労が残らないか
集中して作業できるか
復職にあたっては、主治医の意見や会社の就業規則などを踏まえて、会社が判断します。もし短時間勤務や残業制限などを利用できる場合は、復職後の勤務条件も事前に相談しておくとよいです。
半年や1年以上の期間が必要な場合
療養が半年以上に及ぶ場合は、会社の休職期間の上限や延長手続きの仕方、休職中の収入保障、社会保険料などを確認します。
長期間休んでいることを理由に「回復が遅い」と焦る必要はありません。まずは静養に専念し、休職の期限が近づく前に会社と相談するようにしましょう。
休職期間の上限に達する可能性がある場合は、復職、休職の延長、退職などの選択肢を医師や会社と整理します。退職後は、離職時に所定の要件を満たすことで、雇用保険の「基本手当」の受給期間を延長できる可能性があります。
今後のキャリアに関わる部分となるため、慎重に判断していくことが重要です。
適応障害で休職する際の給料・手当の取り扱い

休職中の給与の有無は会社によって異なります。
給与が支給されない場合でも、条件を満たせば傷病手当金を受け取れる可能性があります。一方、社会保険料や住民税などは、休職中も支払わなければなりません。
適応障害での休職時の給料・手当などの取り扱いを解説します。
休職中の給料は会社の就業規則によって異なる
休職中に給与が支給されるかどうかは、会社の就業規則や給与規程によって異なります。
法律で休職中の給料支払いが義務付けられているわけではないため、休職中は無給となる場合があります。ただし、会社によっては一定期間のみ給与が支給される場合や、会社独自の手当を利用できる場合もあるでしょう。
休職前には、給与の支給期間や賞与への影響、有給休暇の利用、会社独自の給付制度などを人事担当者へ確認しておくと安心です。
給料の代わりに「傷病手当金」を受け取れる場合がある
休職期間が無給でも、傷病手当金を受け取れる場合があります。
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けず、会社から十分な給与を受けられない場合に手当が支給される制度です。
主な要件は以下のとおりです。
業務外の病気やケガの療養中である
これまで従事していた仕事ができない状態である
連続する3日間の待期を含め、4日以上仕事を休んでいる
休業した期間について給与の支払いがない、または傷病手当金より少ない
1日あたりの支給額は、給与の約3分の2です。具体的には「支給開始日以前12ヵ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」で計算されます。
もし給与が一部支給される場合は、傷病手当金との差額が支給されることがあります。
手当の支給期間は、同一の傷病について支給開始日から通算して1年6ヵ月です。申請は加入する健康保険を通しておこないますが、書式や提出先が異なるため、勤務先や健康保険組合へ手続きの流れや必要書類を確認しておくとよいでしょう。
社会保険料や住民税の取り扱い
休職中も健康保険・厚生年金保険に加入し続けるため、原則として社会保険料は引き続き発生します。休職のみを理由とした保険料免除制度はありません。
ただし、給与から社会保険料を控除できなくなるため、支払方法を人事担当者に確かめておきましょう。
また、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、休職して収入が減ったあとも支払いが続く場合があります。給与から天引きする特別徴収を続けるのか、納付書などで支払う普通徴収に切り替えるのかなどは、会社や自治体に確認してみましょう。
適応障害の休職中の過ごし方

休職中の過ごし方は、心身の状態や治療方針によって異なります。休職直後から復職準備をするのではなく、以下のように各フェーズごとに過ごし方を考えていく形です。
休養を優先する時期
生活リズムを整える時期
復職準備を進める時期
適応障害で休職した場合、まずは心身をしっかりと休めることに集中しましょう。無理を重ねると症状が長引くため、復職までの道のりも遠のいてしまいます。
心身の回復段階に合わせて適切な過ごし方を把握し、焦らず段階を踏んで療養生活を送りましょう。
休職直後は休養や通院を優先する
休職直後は、資格の勉強や転職活動などの予定を詰め込まず、休養と通院を優先します。何もしないことで焦りを感じる場合もありますが、疲れているときは休養しながら過ごすことも重要です。
服薬については医師や薬剤師の指示に従い、自己判断で薬を飲むのをやめたり途中で違う薬を飲んだりしないことが大切です。
睡眠や食事が取れない状態が続く場合や、症状が強くなった場合は、次回の受診を待たずに医療機関へ相談しましょう。
状態が落ち着いたら生活リズムを整える
状態が落ち着いてきたら、無理のない範囲で起床・就寝時間や食事の時間を整えます。活動は短時間の散歩や外出など負荷の少ないものから始め、翌日に強い疲労が残らないかを確認しながら、量を調整しましょう。
睡眠時間や気分、疲労感、外出時間などを記録すると、体調の変化を主治医へ伝えやすくなります。調子がよい日でも活動を増やしすぎず、体調の波を含めて日々の生活を振り返ってみてください。
旅行・外出は主治医と相談しながら決める
休職中の旅行や外出は禁止されているわけではありません。
ただし、長距離の移動や慣れない環境が負担になる場合もあるため、回復状況や治療方針を踏まえて、主治医と相談します。会社の人に疑念をもたれないよう、周囲への配慮も欠かせません。
帰省して療養する場合や長期間自宅を離れる場合は、通院を継続できるか、会社からの連絡を受け取れるかも確認しておきましょう。もし外出後に体調が崩れた場合は、活動量を少なくするなど、日々の生活を一旦見直すとよいです。
罪悪感や焦りを抱え込まない
休職中に罪悪感を抱く方は多いですが、治療や回復のために必要な期間だと受け止めることが大切です。同僚への申し訳なさや復職への焦りが強いときは、主治医や家族に気持ちを伝えてみましょう。
休職中の過ごし方は他人と比べず、療養に専念することが重要です。その日の状態に合わせて、できることから取り組みましょう。
適応障害の休職から復職を目指すための準備

復職は、症状が軽くなったという本人の実感だけで決められるものではありません。原因への対策がないまま以前と同じ働き方に戻ると、再発するリスクが高まります。
主治医の意見や会社の復職基準、産業医などの意見を踏まえて会社が判断し、必要に応じて個別の職場復帰支援プランを作成します。
復職後も働き続けるためには、生活リズムや通勤への対応のほか、休職に至った背景を整理し、業務量や勤務時間などを調整するのが重要です。
適応障害の休職から復職を目指すための準備の仕方を解説します。
適応障害の休職から復職については、以下のコラムでも詳しく紹介しています。
主治医と相談して復職時期を決める
まずは主治医へ、睡眠や食事、集中力、疲労の残り方などを伝え、復職に向けた状態を確認します。医師の意見や会社の判断などをもとに、復職時期を決めていきましょう。
なお、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」によれば、主治医による復職が可能かどうかの判断は、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復していることを意味するとは限らないとされています。
そのため、主治医との相談内容を会社に共有し、社内制度に沿って復職の可否や時期を決めましょう。
勤務時間・業務量・配置について職場と相談する
復職後の勤務条件は、以前と同じ働き方へ一度に戻すのではなく、本人の状態と会社の制度に合わせて調整します。面談では、仕事内容や働き方に関する不安点、配慮してほしい点があれば率直に伝えましょう。
具体的には、以下のポイントについて確認するとよいです。
短時間勤務や残業制限
業務量や業務期限の調整
出張や交代勤務の制限
担当業務や配置の見直し
定期的な面談や体調の確認
どのような配慮が必要かは一人ひとり異なります。配慮を希望する理由や期間を整理し、復職後も定期的に見直しましょう。
勤務時間や業務内容の調整を、本人・企業・主治医の三者で進める支援機関もあります。リワークセンターもそのひとつで、慣らし出勤の開始時期や勤務日数を企業側と直接すり合わせるため、会社との話し合いを一人で抱え込まずに済みます。
復職支援を利用する
復職への不安や悩みを和らげるには、リワークなどの復職支援プログラムを活用することも検討してみましょう。
リワークとは休職している人が、職場復帰に向けて生活リズムや作業能力、ストレスへの対処法などを整えていく支援プログラムのことです。
生活リズムを整える、一定時間活動する、通勤を想定して外出する、ストレスへの対処法を学ぶ、休職に至った背景と再発防止策を整理するといった取り組みをします。
支援内容や利用条件は、医療機関、地域障害者職業センター、障害福祉制度を利用する支援機関などによって異なります。医師や会社と相談し、自分の状況に合った支援を検討しましょう。
たとえばリワークセンターでは、一人ひとりに合わせた支援プランを作成し、週1回の定期面談で目標を確認しながら進めるため、自分の回復ペースを見失わずに復職準備を進められます。
休職からのリスタートを目指す人は、利用を検討してみてください。
適応障害による休職や復職の悩みはひとりで抱え込まず相談しよう

適応障害による休職では、体調や会社との手続き、収入、休職期間、復職後の働き方など、さまざまな不安が生じます。すべてを自分だけで整理しようとせず、相談内容に応じて医師や職場、支援機関などを利用しましょう。
休職からの復職を専門的に支える支援機関という選択肢もあります。リワークセンターもそのひとつで、支援スタッフの70%以上が、精神保健福祉士や公認心理師などの専門資格を有しています。体調の相談から復職の段取りまで専門職に伴走してもらえます。
利用を決めていない段階でも相談できるため、復職後のリスタートに不安を感じる人は、利用を検討してみてください。