適応障害と診断され休職。適応障害の休職中の過ごし方や復職のポイントとは
メンタルヘルス不調のなかでもうつ病とは異なり、一般的にはあまり耳慣れないのが適応障害です。ですが、休職者の診断名を見てみると、うつ病に次いで多いのが、この適応障害でもあります。このように、意外に身近で、あまり知られていない適応障害の症状・治療や休職中の過ごし方、職場復帰する際のポイントについて今回は説明していきます。
メンタルヘルス不調のなかでもうつ病とは異なり、一般的にはあまり耳慣れないのが適応障害です。ですが、休職者の診断名を見てみると、うつ病に次いで多いのが、この適応障害でもあります。このように、意外に身近で、あまり知られていない適応障害の症状・治療や休職中の過ごし方、職場復帰する際のポイントについて今回は説明していきます。
人が生活していく上で、嫌なことやイライラすること、ストレスに感じられることから完全に逃げることはできません。
多くの人は「今日は気分が悪かった」「いい日じゃなかった」と憂うつになったり、気分が滅入ったりして、ストレスな出来事をやり過ごします。
ところが、ある決まった場面や対人関係など、特定のストレスに直面したとき、普通とは違う憂うつさやイライラ感、不安を感じることがあります。普段では考えられないような行動をとるかもしれません(無断欠勤など)。
これらは、とても辛いと感じたストレスに対する反応で、時には日常生活に支障をきたすこともあります。
けれども原因となるストレスから離れると、憂うつさや不安を感じずに済むこともあるのです。休日には趣味や娯楽を楽しむことができ、気分の落ち込みもやわらぎます。
あなたは、自分は大丈夫、と思うでしょう。
しかし、再びストレスの強い状況になるとどうしても気が滅入り、不安が募り、動悸やめまいが生じてしまいます。あるいは涙が止まらなくなります。
このように、特定のストレスに対して、抑うつ気分や気力の低下、不眠や身体の症状が出る疾患(障害)を適応障害と呼びます。うつ病とは異なり、適応障害の場合、原因となっているストレスは明確です。
たとえば、人前でプレゼンテーションをした際、上司に叱責された経験。それ以来、プレゼンテーションをしないといけなくなると、不安でたまらなくなり、冷や汗が止まらなくなります。
ほかには、職場のなかでの対人関係。うまく溶け込めず、孤立した気持ちでいつも過ごしています。すると、職場にいると憂うつな気分になり、気力や意欲が低下していきます。寝つきが悪くなったり、朝起きられない、という症状があらわれます。
これらはあくまで一例ですが、適応障害の特徴をよく表しているといえるでしょう。
<適応障害の主な症状>
心に関するもの:抑うつ気分、意欲の低下、不安や焦り、強い緊張感、涙もろくなるなど
身体に関するもの:動悸、めまい、頭痛、腹痛、倦怠感など
適応障害は特定のストレスと直結していますので、治療の第一選択はストレスから離れることです(環境調整)。
原因が職場内のストレスならば部署異動、休職や離職も選択肢のひとつです。
適応障害は通常の場合、原因となっているストレスが消失すれば、6ヵ月以内に症状も改善するといわれています。
ただし、原因となるストレスが持続する場合には、適応障害も引き続き持続するので注意が必要です。
このような病気の特徴を考えると、適応障害の治療は、まずはストレスから離れた場所でゆっくりと療養することです。原因となったストレスのことは忘れ、症状の消失を目指します。
症状がなくなり、ストレスな環境に戻っても問題がなければ、回復したといえるでしょう。抑うつ気分や不安などがとても強く、日常生活もつらい場合、薬が出ることもありますが、あくまで対症療法のためのものです。
治療の基本はストレスから離れることで、必ず服薬しないといけないものではありませんので、症状に合わせて医師より処方を受けてください。
適応障害で休職している場合、症状が落ち着くのを待ちます。
同時に、原因となったストレスについて理解を深めるのも大切なことです。
次に再びストレスな場面に出くわしたとき、適応障害にならないためにも、自分のストレスの傾向について知っておけば、ストレスに対処する方法を見つけられます。
その分析をおこなうのに、休職時間を活用してみてはいかがでしょう。
分析の内容としては次のものが挙げられます。
あなたにとってストレスに感じられることは何でしょうか
そのストレスを解消するための解決策はありませんでしたか
ものの見方を変えれば、ストレスに思えていたこともストレスでなくなることはないでしょうか
これらについて検討をおこなってみることが大切です。
具体的な例を挙げながら、どのように検討していくか見ていきましょう。
たとえば、人前で話すことが怖くて仕方がない場合を想定します。
なぜ恐怖や不安を感じるのか、掘り下げて考えてみます。
①あなたのストレスは何でしょう
答えは人前で話すことですね。人前で話すことに強い恐怖と不安を感じています。
②恐怖や不安を感じないための、何か工夫はできませんでしたか
答えは、ぶっつけ本番で臨むのではなく、事前に練習などできなかったか、などがあります。
また自分ひとりで何かしようとするのでもありません。プレゼンテーションのうまい同僚に見てもらうなどしてアドバイスをもらうのも恐怖や不安を和らげる手段のひとつです。
③あなたは何に対して恐怖を感じているのでしょうか。うまく話せないことであるなら、それを過度に卑下していませんか
これは難しい検討です。あなたはもしかしたら、人前でうまく話せない自分を恥ずかしい、だとか、ダメな人間だ、と考えているかもしれません。
しかし、これらの検討は、あなたがストレスに立ち向かう上で役に立ってくれるものです。
特に③の検討は重要です。
人前でうまくプレゼンテーションができないことは、あなたの人間の価値を下げるものではないはずです。実際に、あなたが似たタイプの同僚を眺めたとき、その人を下に見たりするでしょうか。
きっと、そうはしないでしょう。
あなたは自分自身にだけ特別厳しく当たるのです。過ぎた完ぺき主義があなたをきつく叱責しているようです。
「少しくらい失敗しても大丈夫だよ。完ぺきなスピーチじゃなくても問題ないよ」
あなたは親しい友人には語りかけられるのに、自分にはできません。まず、そのような自分を知ることから、ストレスへの対策は始まります。
最初から完ぺきを求めようとせず、階段をのぼるように上達するイメージを膨らませましょう。
そのためには、プレゼンテーションが得意な同僚の手助けを借りるのも悪いことではありません。自分ひとりで抱え込み、全て自分でやらなければ、という考え方から抜け出すこともストレス対策の一環です。
ストレスとうまく向き合っていくということは、いかに重たい荷物を重く感じずに運べるかというスキルなのです。そのスキルをあなたが身につけたとき、適応障害との付き合い方はずっと楽になっているはずです。
適応障害は原因となるストレスから離れ、療養すれば6ヵ月ほどで回復するといわれています。
復職の目安はそのあたりになるでしょう。
つらい症状が消失し、ストレスにも対処できるようになると、職場復帰が見えてきます。
主治医から復職可の診断が下りれば、復職に向けて動き始めることになります。
まずは次のポイントが改善されているかチェックしてみましょう。
<復職のポイント①>
規則正しい生活リズムになっている
質の良い睡眠がとれており、寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたりしない
就労時間に勤務できるだけの体力がある
週5日休まず勤務でき、週末には疲労を回復できる
そして、適応障害の場合は次のポイントも大切です。
<復職のポイント②>
ストレス解消法を持っている
困ったときには誰かに相談できる
不調感を覚えたときはすぐに主治医に相談する
適応障害はストレスとなる原因に対して反応が生じる疾患(障害)です。ストレスと感じてしまう事柄、出来事をどう処理するかなど、きちんと対策を講じてから職場復帰することが重要です。
ストレスを強く感じる場面に出くわしたとき、ストレス発散・解消できる対処法を身につけているでしょうか。
その日仕事で感じたストレスな出来事を、プライベートまで持ち込まないよう、気持ちの切り替えができるようになっていますか。
ストレスを抱え込まないこと、つらいときには無理をせず、第三者の助けを求められることも大切です。
全てをひとりで解決しようとせず、必要に応じて誰かの力を借りましょう。
復職前にもう一度振り返り、職場復帰のための準備を整えてください。
そして、職場復帰後はいきなり休職前と同じパフォーマンスを自分に期待せずにおくのも大事です。
休職中の生活は、想像している以上に体力低下を招いているものです。最初からフルタイムで全力疾走するイメージで働くと、息切れをしてしまいます。
そのためにも以下のポイントに気をつけて、健やかに働ける職場復帰を目指しましょう。
<復職後、仕事中のポイント>
最初からフルタイムは避け、試し出勤や時短勤務から始める
データ入力や書類の処理など、負荷の軽い事務系の仕事から始める
ストレスにつながりやすい対人業務は避ける
職場によっては、復職者のために、最初は短い時間から勤務を始める制度を用意しているところもあります。
いきなりフルタイムで勤務するのではなく、短い時間から徐々に勤務時間を延ばしていくことができれば、体力面の負担も軽く、環境にも適応しやすいです。
業務の内容についても同じです。
最初から負荷のかかる、責任の重い内容から始めるのではなく、ストレスを感じにくい軽作業から始めることをお勧めします。
具体的にはデータ入力や、書類の整理など、無理なく働ける業務がよいでしょう。
職場と相談し、どのような条件で職場復帰できるか確認しておくのも、スムーズな職場復帰のポイントです。
ストレスを溜めないための工夫は色々ありますが、このように様々な工夫を組み合わせることで、うまくストレスに対処していくのが適応障害の職場復帰の際には重要です。
ここまで適応障害について理解を深めてきました。大切なことを改めて復習しておきます。
適応障害は、その人にとって特別つらいと感じられる、ストレスの原因となる事柄や出来事に対する反応です。
その特定のストレスと反応である症状は結びついているので、ストレスがなくなれば症状も消失します。
ストレスから離れて適切な治療を受け、ゆっくりと休養すれば、6ヵ月を目安に回復します。ただし、ストレスが長引いている場合は、症状も引き続き持続します。
ストレスに対する反応性の疾患(障害)ですので、ストレスとどう付き合っていくかが、職場復帰に向けてのポイントになります。
休職期間中に、ストレスへの対処の仕方を工夫し、身につける準備をしておきます。
また、すべてひとりで解決しようとせず、信頼できる上司や同僚に助けてもらう勇気も持ちましょう。
ストレスが許容量を超えてしまうと危険信号です。自分のストレス許容量に注意を向けつつ、長く安定して働けるように無理のない職場復帰を目指しましょう。
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