では、実際にイライラが発生するメカニズムに目を向けてみましょう。
“わたし”はなぜAの行動にこんなにも苛立ちを感じるのでしょうか。
それは、特定の状況に直面すると、自然に浮かんでくる考えやイメージと結びついています。
この場合は「ミーティングにギリギリに参加する」、「だらしのない服装」という状況が引き金になっています。
Aにこのように対応されて、“わたし”はどんな気持ちになったでしょう。
「怒り・悲しい・不愉快」いろいろな感情が入り混じった気持ちになるかもしれません。
その感情自体を否定する必要はありません。
大切なのは、このような感情を引き起こした考えを明らかにすることです。
“わたし”はAに対して「なんて失礼なんだ」とか「わたしやみんなをいい加減に扱っている」と考えなかったでしょうか。
だから、ストレスに感じるし、苛立ちをおさえることができません。
では、ここで想像を膨らませてみましょう。
逆に、自分がAのように始業ギリギリにスウェット姿で飛び込む姿です。私はどんな気分になるでしょうか。
私はもちろん同僚をいい加減に扱っているつもりもありませんし、服装に悪意もありません。
けれども、他人に対して「わたしは許せない」と思うふるまいをしてしまった自分を許せない気持ちが湧いてきませんか。
自己嫌悪のような、憂うつな気分におそわれるはずです。
そして、「私はなんてダメな人間なんだ。社会人として失格だ」という考えにとらわれます。
現実的に考えれば、業務に支障を来たさなければ、始業ギリギリに参加しても構いませんし、そのことで“わたし”の人間性まで否定されません。
しかし、私はどうしても「5分前にきちんとした身なりで参加する」ことをやめられずにいます。
そこには、「そうしなければ、自分はダメな人間だ。無能だ」という思い込みがあるからです。
この思い込みは比較的簡単に気づくことができます。
自分の中で口ぐせになっている言葉はありませんか。「俺はダメな奴だ」「〇〇失格だ」。
この言葉をさらに掘り下げたとき、イメージされる姿はどのようなものでしょう。
社会人として失格だ。
俺はダメ人間だ。
ダメ人間な自分は誰からも相手にされない。
このように、少しずつ掘り下げていくことで、こころのより深い部分に近づいていくことができます。
人間の心は氷山の一角のようであり、私たちが見えているのはほんの一部にすぎません。
私たちのこころの大半は、自分自身気づかないまま、日々を過ごしていることになります。
ですが、今回紹介したような掘り下げるやり方を用いることで、気づいていなかった自分のこころの中核にあるものにたどり着けることがあります。
決して容易ではありませんが、まずは思い込みに気づくことで、自分の言動をコントロールしてみましょう。
自分を縛っているルールにも思い当たるはずです。
あなたの思い込みがストレスや他人とのいざこざの原因となっていると気づけたら、日常生活はもっと楽になるでしょう。