復職とは? 会社復帰の条件や判断基準を徹底解説!
2025/7/15 最終更新
復職は、病気や育児・介護などで一時的に仕事を離れていた方がもとの職場に戻る大切なプロセスです。
このコラムでは、復職の基本的な定義から復職と職場復帰の違い、復職のタイミングや復職時の注意点まで、会社復帰に関するあらゆる情報を解説します。
2025/7/15 最終更新
復職は、病気や育児・介護などで一時的に仕事を離れていた方がもとの職場に戻る大切なプロセスです。
このコラムでは、復職の基本的な定義から復職と職場復帰の違い、復職のタイミングや復職時の注意点まで、会社復帰に関するあらゆる情報を解説します。
復職とは、病気や育児・介護などで一時的に仕事を離れていた従業員が、もとの職場に戻り業務を再開することです。
これは、雇用関係を維持したまま休養や療養期間を経て職場へ戻ることを意味します。
企業における休職は会社に籍を置きつつ業務を停止している状態であり、復職はその期間を終えて再び職務に就くための手続きです。
多くの企業では、この復職に関する条件や判断基準が就業規則に明確に定められています。
休職制度は、従業員がなんらかの事由により一時的に業務を離れ、再び職場へ戻ることを前提とした制度です。
主な休職理由には、病気やケガ、育児、介護などがあります。休職から復職までの一般的な流れは、従業員が休職を申し出て、会社の承認を得ることで休職期間に入ります。会社によっては、休職中も給与の一部支給や社会保険料の支払いが継続される場合があります。
復職の際には、主治医の診断書提出などを経て、復職が可能と判断されれば職場復帰となります。
法的な位置づけとして、育児休業や介護休業は「育児介護休業法」にもとづき企業に取得が義務付けられています。病気やケガによる休職は労働基準法で直接定められてはいませんが、多くの企業が就業規則に規定を設けています。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov 法令検索
“復職”も“職場復帰”も休業後に再び仕事を始めるという意味ですが、異なるニュアンスで用いられることがあります。
特に復職は、休職期間を経てもとの役職や職務に戻ることを明確にする場合です。
一方で職場復帰はもとの職場に戻るという広い意味で使われ、もとの役職や職務にこだわらず別の部署への異動を伴う場合を指すこともあります。
実務においては休職前の状態での継続を前提とするため“復職”が使われることが多いですが、状況によって“職場復帰”が用いられることもあります。
休職の理由によって、復職までのプロセスにはさまざまな違いがあります。主な休職理由と、そのポイントをまとめました。
休職理由 |
特長 |
復職の注意点 |
傷病休職 |
心身の不調による休職。期間は状況によって異なるが、一般的に数ヵ月から数年。 |
復職には主治医の診断書が必要。病状の回復状況と、業務遂行能力の有無が重視される。時短勤務など段階的な復職が活用されることも多い。 |
育児休業 |
法律で認められている、子どもの養育を目的とした休業。原則、子どもが1歳になるまで(延長条件あり)。 |
期間が法律で定められているため、復職時期が明確。復職直前の面談で、働き方や業務内容について相談・調整をおこなう。 |
介護休業 |
法律で認められている、家族の介護を目的とした休業。対象家族ひとりにつき、通算93日まで。 |
介護状況の変化に柔軟に対応できるかがポイント。復職後も、介護と仕事を継続するための調整が必要となる場合がある。 |
休業していた従業員が復職をおこなうメリットは、主に以下のとおりです。
キャリアの継続と安定
経済的な安定
福利厚生の継続利用
就職の負担軽減
また会社側にも、以下のように社会的意義も含めたメリットがあります。
優秀な人材の維持
組織としての生産性の維持・向上
企業イメージの向上
ノウハウの維持継承
休業から復職する際には、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。
従業員本人には、
体力的・精神的な負担
人間関係の再構築
業務の変化への適応
周囲からの視線
給与や待遇の変動
といった心身にかかるリスクが懸念されます。
会社側にとっても、
復職後の業務調整の必要性
生産性の低下リスク
サポート体制の構築と維持
再休職の発生リスク
配置転換や業務変更の難しさ
といった課題を考慮する必要があります。
復職は、従業員の健康状態と会社の受け入れ体制の両面から慎重に判断すべき重要な取り組みです。
特に従業員本人の傷病から復帰する際には、適切なタイミングを見極めるために、主治医による医学的判断、産業医による職場環境を踏まえた評価、そして会社側の業務上の条件や配慮事項を総合的に考慮する必要があります。
ここではこれら三者の視点から、復職の可否や最適な時期を判断するための具体的な基準について解説します。
主治医が復職可能と判断する基準は、患者の病状が安定し、業務に耐えうる健康状態であることです。
病状が安定し、業務に耐えうる健康状態であると診断できること
薬の調整が完了していることや、症状がコントロールされていること
通勤や一定時間の業務遂行が可能であると判断できること
再発のリスクが低いと見込まれること
具体的な例では、睡眠が安定し、痛みが落ち着いているなど、社会生活に必要な能力が回復しているかが目安です。
診断書には「就労可能である」旨の明記に加え、「1日〇時間勤務」「残業不可」といった業務制限や配慮事項が記載されることもあります。
主治医は服用薬の副作用や今後の治療方針も考慮し、無理なく段階的に復帰できるよう慎重に判断します。
産業医が復職判断で重視するのは、主治医の医学的見解に加え、従業員が実際の職場で安全かつ継続的に業務を遂行できるかという点です。
集中力や判断力、記憶力など、業務に必要な心身の機能が回復しているか
通勤による負担に耐えられるか
職場の環境(騒音や人間関係など)、業務上の負担に対応できるか
時短勤務、業務内容の変更、配置転換など、会社としてどのような配慮が可能か休憩時間などにも会話を心がけ、同僚との距離を縮める
復職によって病状が悪化したり、再発したりするリスクは低いか
主治医と産業医の見解が異なる場合、産業医は会社と従業員の双方の状況をより深く理解している立場から、両者の意見を調整する役割を担います。
産業医の意見は、会社の安全配慮義務を果たすうえで特に重要です。
会社が復職を認める一般的な条件は、従業員が健康上の問題なく、安全に業務を遂行できる状態であることです。
これはおもに医師の判断に基づいて、以下の観点から総合的に判断されます。
主治医からの「就労可能」という診断があること
産業医による「復職可能」という判断があること
本人の復職意欲があり、会社の業務内容や環境に適応できると見込まれること
復職によって本人の健康状態が悪化したり、悪影響を及ぼしたりしないよう、会社として適切な配慮ができる体制が整っていること
業種や職種により、回復度合いの判断基準は異なります。
たとえば身体的負担の大きい職場では体力面が、対人ストレスが発生しやすい職場では精神面の安定が重視されます。
会社には労働契約法にもとづく安全配慮義務があり、安易な復職の承認や配慮不足はトラブルにつながるため、復職者の状態に応じた適切な配慮が求められます。
復職をスムーズに進めるためには、事前の準備と手続きが欠かせません。ここでは復職に向けてのポイントを簡潔に説明します。
1 復職意思の連絡:休職期間満了前に、会社に対して復職の意思があることを伝えます。
2 書類の準備・提出:主治医からの診断書や復職願など、会社が指定する書類を提出します。
3 面談: 会社の産業医や人事担当者との面談を通じて、復職の可否や業務内容、配慮事項などが話し合われます。
4 段階的復職の検討: 必要に応じて、時短勤務や軽作業からの開始など、段階的な復職が実施されることがあります。
会社に復職の意志を伝えるタイミングは、休職期間満了の1~2ヵ月前が一般的です。
これは、会社が復職者の受け入れ準備をおこなうためです。
具体的な期限は就業規則で定められていることが多いため、事前に確認し早めに連絡することでスムーズな復職につなげられます。
復職に必要な書類は企業により異なりますが、主なものは主治医の診断書と復職願(復職届)です。
診断書には「就労可能である」旨や業務上の配慮事項を書いてもらう必要があります。
会社の指定書式があればそれに従いましょう。特に指定がない場合、復職願は従業員本人が任意の形式で作成します。
下記の例のとおり、復職の意志と復職希望日などを記載します。
例:私は〇年〇月〇日より休職しておりましたが、この度病状が回復いたしましたので、〇年〇月〇日より復職したく、ここにお願い申し上げます。
書類に関しては、まず人事担当者や上司に復職希望と書類準備状況を事前に連絡します。
次に主治医に診断書作成を依頼し、他の書類も準備します。
用意ができたら、会社の指示に従って指定された期日までに提出します。
復職面談は、復職の可否を判断しスムーズな職場復帰を支援するためにおこなわれます。
一般的な面談ではまず目的の説明があり、その後に本人の健康状態、復職後の働き方について確認します。
よく聞かれる質問と回答のポイントを紹介します。
1「現在の健康状態はいかがですか?」
具体的な症状の回復状況、服薬状況、睡眠や食事などの生活リズムの安定度合いを具体的に伝えます。「もう大丈夫です」といったおおまかな返答ではなく、客観的な説明を準備すると良いでしょう。
2「復職後、どのような働き方を希望しますか?」
時短勤務や業務内容の変更など、具体的な希望があれば明確に伝えましょう。無理のない範囲で会社と協調して働く姿勢を見せます。
3「再発防止のために、どのようなことを考えていますか?」
体調を崩しそうなときの対処法、定期的な通院やセルフケアの継続など具体的な予防策を伝えます。
また自分からも職務への意欲や、休職をフォローしてもらったことへの感謝を伝えておくとさらにスムーズになるでしょう。
段階的復職制度(リハビリ出社)は、休職者が徐々に勤務時間や業務量を増やし、心身の負担を軽減しながら職場に慣れていくための仕組みです。
これにより再休職のリスクを減らし、安定した職場復帰を促します。
一般的には、以下のような仕組みが活用されています。
通勤訓練の実施:復職前に通勤経路の往復訓練をおこない、負担を確認します。
勤務時間の段階的調整:短時間勤務から始め、様子を見ながら勤務時間を増やします。
業務内容の段階的適応:軽作業から始め、徐々に責任のある業務へ移行します。
休憩時間の確保:意識的に休憩を取り、心身を休める時間を確保します。
調整の期間は1〜3ヵ月が目安で、週単位などで会社と相談しながら進めます。就業規則や復職支援制度を確認し、担当者との密な連携が成功の鍵です。
職場への復帰挨拶は、スムーズに業務に戻るために重要です。
復職初日の朝礼時などに全体へ簡潔に挨拶し、特にお世話になった方には個別に感謝を伝えると良いでしょう。挨拶では休職中の支援への感謝、そして業務への意欲を示すと好印象です。
例:おはようございます。〇月〇日より休職しておりました〇〇です。この度、皆さまのおかげをもちまして、本日より復職させていただくことになりました。まだ不慣れな点も多々あるかと存じますが、一日も早くもとの業務に戻れるよう精いっぱい努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
手土産は必須ではありませんが、持参するなら個包装で日持ちし、万人受けするお菓子がおすすめです。なにより無理なく感謝の気持ちを伝えることが大切です。
復職後の給与や社会保険、福利厚生といった待遇面は、休職前と異なる可能性があります。
特に休職期間中に給与が支給されなかった場合や、復職後に時短勤務などの勤務形態を選択した場合、給与額や手当に影響が出ることも考えられます。
ここでは安心して職場復帰できるよう、復職後の給与や賞与の取り扱い、社会保険や雇用保険の手続きにおけるポイント、そして福利厚生の適用状況など、事前に確認しておくべき重要な情報について詳しく解説します。
休職期間中、原則として会社からの給与支給はありません。
病気やケガによる休職の場合、全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合から「傷病手当金」が支給されることがあります。これは最長1年6ヵ月間、標準報酬日額の約3分の2が支給される制度です。(例:標準報酬月額30万円なら日額約6,667円)
復職後の給与は、基本的には休職前の形態に戻ります。
しかし時短勤務や業務内容の変更があった場合は、勤務時間や役職・責任範囲の変更に応じて給与が減額される可能性があります。また休職期間が賞与や昇給の評価期間に含まれると、その分が考慮され減額される場合もあります。
復職前に人事担当者と給与待遇について確認し、不明点を解消しておくことが大切です。
復職に伴う社会保険や雇用保険の手続きは、休職の状況により異なります。
社会保険(健康保険・厚生年金保険):一般的に休職期間中も社会保険の加入は継続され、保険料も通常通り徴収されます。復職後の大きな手続きは不要ですが、休職中に給与が著しく減少した場合は標準報酬月額の見直し手続きが必要となることがあります。
雇用保険:休職期間中に給与が支給されない場合、原則として雇用保険の被保険者資格は一時的に適用されない状態になります。休職中に離職扱いとなっていなければ、復職後に会社が改めて雇用保険被保険者資格取得届出書をハローワークに提出することで資格が再開されます。この届出は、原則として従業員が復職した日の属する月の翌月10日までにおこなう必要があります。
注意点:・休職中の社会保険料の負担状況(会社立て替えか自己負担か)を確認しましょう。
・雇用保険の加入期間は失業給付に関わるため、手続きの確認が重要です。
・復職後に給与が大きく変動した場合、社会保険料の計算基礎となる標準報酬月額の見直しが必要になることがあります。
手続きの多くは会社がおこないますが、不明点は速やかに確認することが大切です。
復職は新たなキャリアの再開ですが、休職期間を経て環境が変化した職場ではさまざまな注意点が存在します。
心身の健康を維持しながら安定して働き続けるためには、事前の心構えと対策が欠かせません。
ここでは再休職を防ぎスムーズな職場生活を送るために意識すべきポイント、体調管理のコツや職場の人間関係を円滑に再構築する方法、セルフケア術など、復職後の不安を軽減しながら業務に慣れていくためのアドバイスをご紹介します。
復職後の体調管理は、再休職を防ぎ、安定したキャリアを築くうえで特に重要です。
体調管理:規則正しい生活を心がけ、決まった時間に起床・就寝し、食事も規則正しく摂ることで体内リズムを整えましょう。適度な運動や十分な睡眠を取り、心身を休めることも大切です。また趣味やリラックスの時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を探してみましょう。
業務調整:復職当初は業務量を減らしてもらったり、緊急性の低い業務から担当したりするなど、無理のない範囲で業務を調整してもらいましょう。意識的に休憩を挟むことも大切です。
上司などへの相談:体調の変化や業務上の困りごとがあれば産業保健スタッフに相談しましょう。具体的な症状や、それによって業務にどのような影響が出ているのかを明確に伝えることで、適切なサポートを検討しやすくなります。
長期休職後の職場の人間関係を円滑に再構築するためには、意識的な行動が重要です。
以下に、具体的な方法を紹介します。
復職時の挨拶を丁寧におこない、休職中の感謝と業務への意欲を伝える。
休憩時間などにも会話を心がけ、同僚との距離を縮める。
休職中に変更された業務やルールがないか、情報共有でキャッチアップに努める。
業務で助けられたり気遣ってもらったりした際は、すぐに感謝を言葉で伝える。
焦らず、自分のペースで少しずつ関係を取り戻していくこと。
困ったときの対処法もあわせて紹介します。
休職中の話題に触れられたくない:「ご心配をおかけしましたが、回復し復帰できました」と簡潔に返答する。
周囲から気遣われていると感じる:業務に対する前向きな姿勢で気遣いを和らげる。
孤立感をおぼえる:自分からランチやお茶に誘うなど、交流の機会を作ってみる。
復職後の再休職を防ぐために、自身の心身の状態を把握し、早期に適切な対処をおこなうセルフケアが重要です。
兆候の早期発見方法としては、身体的・精神的サイン、そして自分の行動に目を向けることが大切です。
身体的サイン:倦怠感、頭痛、肩こり、めまい、不眠、食欲不振、胃痛など
精神的サイン:集中力の低下、イライラ、不安感、気分の落ち込み、やる気の低下、感情の不安定さなど
行動的サイン:遅刻・欠勤の増加、ミスが増える、飲酒量が増える、会話が減るなど
またセルフケアのコツや、軽微なサインを発見した際の対処法を紹介します。
趣味や軽いスポーツ、リラックスできる音楽鑑賞など、自分に合ったストレス解消をおこなう。
家族、友人、主治医など相談できる相手を持つ。
すべてを完璧にこなそうとせず、適度に力を抜くことを覚える。
業務の優先順位を明確にし、無理のない範囲で取り組む。
必要に応じて、復職後も定期的な通院・カウンセリングなどのサポートを受ける。
復職は病気や育児、介護などで一時的に仕事を離れた方が、キャリアを継続し再び社会とつながるための重要なプロセスです。
特に病気からの復職のためには医師や会社側とのコミュニケーションやタイミングの見極め、段階的復職制度を活用してのリハビリテーション的な業務への復帰も大切な一歩です。
そして長期的なキャリアのためには、何よりも体調管理やセルフケア術を身につけることが重要です。
適切な準備と周囲のサポートを活用し、前向きに復職を進めましょう。
※コラム中の画像は全てイメージです
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