SSTってどうやるの? -SSTの活用方法-

SSTとはソーシャルスキルトレーニングの略語です。ソーシャルスキルとは社会のなかで生活していくスキルのことで、代表的なものではコミュニケーション能力が挙げられます。他にも、服薬管理・症状管理など、自分の治療に主体的に関われる能力も含み、身につけることでメリットを得られます。

そんなSSTですが、どうすれば実践できるのか紹介します。

  • SSTにはどんなものがある?

    ソーシャルスキルを身につけるためのトレーニング(SST)にはさまざまなものがあり、目的に応じてふさわしい方法を選べます。

     

    ロールプレイ

    SSTの代表的なものとしてロールプレイが挙げられます。これは「特定の場面」を設定し、どのような言動をとれるようになりたいかを考え、指導担当者や参加者と実際に演技をします。演技をした後には、「よかったところ」や「こうするともっとよくなる」という点を提案してもらいます。

    自分の苦手な場面や困りそうな場面、課題となりそうな場面を設定して実施すると効果的です。

     

    ディスカッション、ディベート

    ディスカッションもディベートも相手の言葉に耳を傾け、自分の主張を述べることが必要です。SSTでは言葉のキャッチボールとしてこれらを取り入れ、会話力を磨く練習をおこないます。

     

    ゲーム

    子どものSSTとしてだけでなく、大人のSSTとしてもゲームは有効です。

    ゲームには「ルールを守る」「勝ち負けを受け入れる」「仲間との協力、相談」といった内容が含まれます。一見遊びに見えるかもしれませんが、楽しみながらソーシャルスキルをトレーニングできます。

  • SSTのポイント

    SSTってどうやるの? ―SSTの活用方法―

    ここまで見てきたように、SSTではグループワークを取り入れることが多いです。代表的なSSTであるロールプレイの他のSSTを見てみても、グループワークで実施されていることが理解されるでしょう。

     

    一般的に、グループワークでは参加者が主体的にテーマに取り組むことが求められます。また、他の参加者と同じ目標に向かい共同作業をおこなったり、課題を成し遂げたりすることで、“協力”の意識が生まれます。

    これらはソーシャルスキルを高めるうえで重要な要素です。グループワークの効果を活かすことでSSTはより有用になるでしょう。

     

    ただし、SSTでのグループワークでは注意も必要です。

    たとえば、ロールプレイの参加者のなかには、どうしても人前で演技をしたくないという人もいるかもしれません。このような場合は見ているだけの観察者として参加してもらっても大丈夫です。演技者へのコメントを述べてもらうなど、できる範囲での参加を促せばよいでしょう。

     

    また、人の輪に入ることも難しいという人にはスタッフと一対一でSSTを実施することも可能です。その人の課題に応じて場面を設定しましょう。

    SSTでのコメントは、批判をしない、よいところに目を向ける、個人的な課題には「こうしたらよいのでは」という提案の形で伝えるなどのルール決めをしておくと、参加者も安心して実践することができます。あらかじめしっかりと枠組みを作っておくことがポイントになります。

     

  • 日常生活で取り入れられるソーシャルトレーニング

    メンタルヘルス不調を持つ人であれ、そうでない人であれ、社会生活のなかでは困りごとがつきものです。このようなとき役に立てていただきたいのがSSTです。

    たとえば、次のような場面で困ったことはないでしょうか。

     

    人に何かをお願いする

    人からの依頼をお断りする

    人に感謝の気持ちを伝える

     

    例を一つとり上げて検討してみましょう。人に何かを頼むというのは、なかなか敷居が高いものです。どうすれば相手に快く受け入れてもらえるか、多くの人が頭を悩ませた経験があると思います。

    このような場面で必要なソーシャルスキルには次のようなものがあります。

     

    今、相手に話しかけてもよいのか「察する」スキル

    頼みごとをするときに、相手の都合を「尋ねる」スキル

    相手が気持ちよく受け入れてくれるために「クッション言葉を使う」スキル

    頼みごとを受け入れてくれたことへの「感謝を伝える」スキル

     

    自分の都合を一方的に押しつけるのではなく、相手の立場や状況を尊重するスタイルのコミュニケーションです。

    このようなコミュニケーションのスキルを言葉にしてみると次のようになるでしょう。受け取るほうはどのように感じるでしょうか。

     

    今、話しかけても大丈夫ですか? お願いがあり、相談に来ました。お忙しいとは思うのですが、書類のチェックをお願いできないでしょうか。(略)ありがとうございます。助かります」

     

    「書類のチェックをお願いしたいんですが」と、用件のみを伝えるより、上記のような言い方をしたら印象が変わって聞こえないでしょうか。より柔らかく、好感を持って受け止めてもらえるかもしれません。すると、頼みごとをするという難しいやりとりもスムーズにおこなえるでしょう。

    一つのやりとりをするだけでも、これだけのソーシャルスキルが盛り込まれていると考えると、私たちの社会生活はいかに多くのソーシャルスキルで成立しているか想像がつきます。

    ソーシャルスキルに完ぺきはありませんが、ポイントを押さえ、ストレスの少ない社会生活を送りたいものです。そのためにSSTは有効と言えます。

     

  • まとめ

    日常生活で取り入れられるソーシャルトレーニング

    SST(ソーシャルスキル・トレーニング)にはどのようなものがあるかをまとめてみました。

     

    代表的なロールプレイをはじめ、他にもディベートやゲームなど紹介しました。興味をひかれたものは見つかったでしょうか。

    ソーシャルスキルを高めるトレーニングというと難しそうに聞こえますが、工夫によって楽しんで訓練することも可能です。少しずつの苦手克服(スモールステップ)で自信をつけていくのがコツになります。

    SSTは子どものためだけのものではなく、大人にも有効です。始めるのに遅いということはありませんので、いつからでも挑戦してみてください。

     

    ※コラム中の画像は全てイメージです

執筆:コラム編集部
執筆:コラム編集部
医療・福祉分野で主に障害のある方の支援を10年以上従事。これまでの経験とノウハウを活かし、さまざまな事情から不調になり休職したり、働けなくなったりした方向けに、復職や就職などの“働く”をテーマに少しでも役立つ情報を執筆。
監修:藤澤 佳澄
監修:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。