では、ストレスをためないために積極的に自己主張していきましょう、自分の意見や気持ちを伝えていきましょう、と提案するのは簡単です。
しかし、現実に行動に移すとなると、どうすればいいの、と思う人が大半でしょう。
たとえば、会議やミーティングでの意見の食い違い。自分が引き下がれば、場は収まるかもしれませんが、業務がうまく回ると思えないとします。
あなたはその場の調和と、後々の業務の負担、どちらを選びますか。
自分の意見を押しつけてしまった罪悪感か、何も言えず業務の負担だけ増えた不満。どちらにせよ、ストレスがこころにのしかかるはずです。
一番よいのは、きちんと自分の意見を主張でき、周囲との調和も乱さず、誰か一人が負担を背負い込むのではない職場環境ではないでしょうか。
そのためには、まずしっかりと自己主張をする必要があります。この方法にはコツがあります。
心理学の言葉では『アサーション』と呼び、基本的な考え方はシンプルです。
「あなたの考えは間違っている」という相手を否定するメッセージではなく、「私はこう思う」という「私」発信のメッセージに置き換えることです。
自分の意見を主張したいときに、“あなた”を主語に置くとどうしても否定になってしまいます。そして、否定されて喜ぶ人間はいません。これが対人関係の摩擦のもとであり、対人トラブルの原因になるのです。
しかし、メッセージの主語を「私」にするだけで、ニュアンスはずいぶん変わります。
「あなたはそう思うんですね。私はこう思います」という、相手を否定しない自己主張に変わります。
「私はこうしたいです」という言い方もよいでしょう。相手を否定するのではなく、あなたの願望を伝える表現ですのでとげがありません。
このように表現方法を一つ変えるだけでコミュニケーションの質は変わります。
あなたは自分の気持ちや考えを押し殺す必要はありませんし、適切なコミュニケーションは対人関係の質も高めます。
意見が食い違っても、それはあくまでも考えの違いです。お互いの人間性を否定するものではありません。そのようなコミュニケーションが可能であれば、自分の意見を発信するのに二の足を踏む必要はなくなるはずです。
活発な意見交換は人間関係をスムーズにします。職場の風通しも良くなるでしょう。
この意味でも、アサーションのスキルを用いたコミュニケーションはストレスフリーな職場環境には欠かせないものです。