適応障害により仕事が続かない理由とは? 向いてる仕事や特徴まで解説
適応障害の有無にかかわらず、
原因がはっきりしている適応障害では、原因がはっきりしない他の精神障害と比べると、調整のハードルが下がります。 そもそも、現代においてキャリアを考えたときには転職することが悪いこととはいい切れません。さまざまな場面で経験を積むという考え方もあります。
しかし、せっかく職に就いたのだから長く続けたいと思う方も多いでしょう。そんな方向けに仕事を続けるための自己分析に役立つ情報を共有します。
適応障害の有無にかかわらず、
原因がはっきりしている適応障害では、原因がはっきりしない他の精神障害と比べると、調整のハードルが下がります。 そもそも、現代においてキャリアを考えたときには転職することが悪いこととはいい切れません。さまざまな場面で経験を積むという考え方もあります。
しかし、せっかく職に就いたのだから長く続けたいと思う方も多いでしょう。そんな方向けに仕事を続けるための自己分析に役立つ情報を共有します。
目次
病気や障害のこと、暮らしのこと、
お金や社会保障制度のこと、そして仕事のことなど、
何でもご相談ください。

仕事が続かない理由として、適応障害ならではと考えられるものはあるのでしょうか?
一概にまとめられるテーマではありませんが、傾向を把握することは自己分析の助けにもなるはずです。多く聞かれる理由は以下のようなものがあります。
仕事量が多く、必要な休息がとれない
仕事のペース感が自分に合っていない
仕事内容が能力・性格に合っていない
職場の人間関係が合わない
あなたにも当てはまるものがあるでしょうか?
この4つを見るだけでも、ストレスを感じる場面はみんな共通ではないことがわかります。どれも個人差がある要素ですよね。仕事量が多いと感じる分量も、心地よく仕事を進められるペースも人それぞれです。
さらに、仕事に厳しいノルマが設定されている環境では、大きなプレッシャーが心身の負担につながりやすくなります。また、臨機応変な対応を求められる仕事では、その場で判断したり素早く切り替えたりすることが難しく、ストレスが蓄積しやすくなります。加えて、シフト制や夜勤など不規則な勤務形態は生活リズムが乱れやすく、症状が悪化しやすい要因になります。
職場の人間関係についても同様です。想像しやすいのはギスギスした、揉めごとが多いような人間関係がストレスになることでしょうか。
しかし、一見環境が良く理解もあると感じられる職場でも、体調やタイミングによって合わないと感じることもあるのです。そのようなときに「あんなに良くしてもらったのに申し訳ない」、「気遣ってくれたのに頑張れなかった」と自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。その気持ちのまま次の職場へ転職し、また続かない、という悪循環も仕事が続かない理由として考えられるでしょう。
こうした負担を感じたときには、一人で抱え込まず上司へ早めに相談することも大切です。業務量の調整や、負担が少ない部署への配置転換をお願いできる場合もあります。また、席の場所を変えてもらう、打ち合わせを少人数にしてもらうなど、取り入れやすい配慮を求めることで負担が軽減し、働き続けやすい環境につながることがあります。

適応障害で仕事を続けるためには、休職、環境調整、退職・転職という3つの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、どれが最適かは症状の程度や職場の状況によって大きく異なります。まずは心身の回復を最優先にし、主治医の指示に従いながら選択肢を検討することが大切です。休職で十分な休養を取る、職場に配慮を求めて環境を整える、あるいは無理のない場所へ転職するなど、選べる道はひとつではありません。どの選択肢にも長所と短所があるため、冷静に状況を整理しながら決めていくと安心です。
休職は、心身の回復を最優先にできる方法です。十分な休養を取ることで症状が落ち着き、再び働く力を少しずつ取り戻せる可能性があります。また、転職活動の準備期間として活用でき、自己理解を深める時間を確保できます。さらに、状況に応じてリワークプログラムへ参加し、復職や再就職に向けた練習をおこなうこともできます。経済面では、条件を満たせば傷病手当金を受給でき、収入減による不安を軽減できます。一方で、復帰のタイミングを決める難しさや、復職後の働き方に悩むことがあるなどのデメリットもあります。主治医とよく相談しながら進めることが重要です。
環境調整とは、今の職場で働きやすい状態をつくるための工夫です。たとえば、電話対応を免除してもらう、業務内容を見直して負担の少ない作業に変更してもらうといった方法があります。また、部署異動による配置転換や、時短勤務・テレワークなど勤務形態の調整も有効です。これらの調整を検討する際には、産業医への相談が役立ちます。産業医は体調に合わせた働き方の提案や、会社との調整をサポートしてくれる存在です。適切な環境が整えば、無理なく働き続けられる可能性が高まります。
現在の職場環境がどうしても合わない場合には、退職や転職を選ぶこともひとつの方法です。無理にとどまり続けると症状が悪化する可能性があり、早めに環境を変えるほうが安全な場合もあります。転職を検討する際には、自分に合った職場を見極めることが大切です。たとえば、業務量が適切か、コミュニケーション負担が少ないか、働き方の柔軟性があるかなど、少なくとも3つの視点で確認すると安心です。主治医と相談しながら体調を最優先にし、自分が無理なく働ける環境を選ぶことが重要です。

仕事を続けることだけが必ずしも良いわけではありませんが、長く続けたいと思うことも自然なことです。毎回新しい職場に慣れるまでも大変ですよね。
適応障害のある方のなかでも、仕事を長く続けている人は必要な環境調整を職場へ発信しています。また、発信する内容も具体的なものです。「配慮して欲しいなんて、いいづらいよ……!」と思う気持ちはよくわかります。
しかし、先程見たように仕事の続かない理由は人によってさまざまです。たとえ適応障害に理解のある職場に就職したとしても、必要な配慮がわからなければ環境を整えることはできません。
配慮の内容が食い違う可能性もあります。理解のある職場であればなおさら、具体的に伝えることで長く続けられる可能性が上がります。企業側も必要なことが明確にわかるほうが対応しやすいでしょう。
仕事を続ける方法としては、「休職」「環境調整・異動」「退職・転職」という3つの選択肢があります。
まず休職は、心身の回復に専念できる大きなメリットがあります。傷病手当金を利用できれば収入面の不安を軽減でき、リワーク支援で復職準備を進めることもできます。一方で、職場復帰のタイミングが読みにくい、復帰後に環境が変わらない可能性があるといったデメリットもあります。
環境調整や異動は、今の職場に残りながら働きやすさを高められる点が魅力です。業務内容の変更や勤務時間の調整、部署の変更などで負担を減らせる可能性があります。ただし、企業規模や職場体制によっては希望どおりの調整が難しいこともあります。
退職・転職は環境を大きく変えたい場合に有効です。自分に合う働き方を再構築しやすい一方、就職活動に体力が必要で、収入が一時的に途切れるリスクも伴います。どの選択肢にも良い点と注意点があるため、主治医の意見を聞きながら、自分にとって無理のない働き方を検討することが大切です。
ストレス源はどのようなことなのか、どのように調整すれば職務を滞りなく進めることができるのか、など具体的に伝えるためには自己分析が不可欠です。
別のコラム『自分取り扱い説明書』の使い方』などを参考に、自己分析をしてみましょう。
ストレス源を特定する際には、「仕事内容」「人間関係」「労働環境」の3つの観点から整理すると把握しやすくなります。仕事内容では、業務量が多い、締め切りが短い、マルチタスクが続くなど、作業そのものが負担になっていないかを確認します。人間関係では、上司との相性、チームメンバーとのコミュニケーションの難しさ、相談しづらい雰囲気などがストレス要因になりやすいです。労働環境では、騒音が多い、席の配置が落ち着かない、在宅勤務ができないなど、物理的な環境が影響する場合があります。3つの視点で整理することで、自分がどの場面で負荷を感じやすいかが明確になり、必要な配慮を伝えやすくなります。

自己分析をしたら、誰に、どこまでを、どのように伝えるかを吟味しましょう。たとえば、”こまめな休息”が必要な場合。どのくらいの頻度・規模で休息が必要なのかによって、理解を求める相手が変わってきます。「30分~1時間に数回、コーヒーを飲む」という程度であれば軽く上司の耳に入れておけば良いかもしれません。職場の風潮によっては自己調整の範囲ともいえるでしょう。
一方で「1~2時間に1回、外の空気を吸いに席を離れる」のであれば、伝えるのが上司だけだと支障がでる職務もあります。頻繁に普段の居場所を離れることがあるのなら、同僚にも伝えておくことを検討しましょう。席を離れている間に連絡事項が生じた場合の対応なども含めて伝える必要もあるかもしれません。
業務内容の変更をお願いする場合には、たとえば電話対応を免除してもらう、対面接客を減らす、資料作成など一人で集中できる業務を中心にするなどの具体的な方法があります。また、部署異動も有効な環境調整のひとつです。騒がしい部署から静かな部署へ移る、対人対応の多い部署から事務系の部署へ移るなど、負担の少ない環境に変えることで働きやすさが大きく改善する場合があります。
状況に合わせた伝え方も考えましょう。同僚にも伝えるのなら、自分で伝えるほかに上司から伝えてもらう方法もあります。また、朝の症状が辛く出勤時間をずらす、時短勤務にするなど勤務時間についての調整であれば人事部との相談や契約内容の調整も必要になってきます。
直属の上司と定期的に面談をお願いするのも良い方法です。体調が常に一定とは限りません。調子が悪くなってからでは、相談しづらいと感じることもあるでしょう。定期的な面談を事前に予定しておけば、体調変化や気づきを日頃から共有することができます。
相談相手によって伝える内容は変わります。上司には「体調の波があるため、業務量を一定にしたい」など業務への影響と必要な配慮を具体的に伝えましょう。同僚には「席を離れることがあるので、その間の連絡を知らせてもらえると助かります」など短く実務的な内容が適しています。人事には「勤務時間を調整したい」など契約に関わる希望を丁寧に説明し、変更の手続きについて確認すると安心です。

適応障害のある方に向いている仕事には、いくつかの共通した特徴があります。まず、マイペースに作業できることが挙げられます。自分のペースで取り組める仕事は、プレッシャーや突発的な対応が少なく、心身の負担を軽減しやすいでしょう。また、業務が定型化されている仕事も適しており、手順が明確で見通しを立てやすい点が安心につながります。さらに、コミュニケーション負荷が少ない仕事は、人間関係によるストレスが比較的少なく、集中しやすい環境が整いやすいといえます。
具体的な職種としては、事務職やデータ入力のように安定した業務が中心になる仕事があります。決まった手順に沿いながらコツコツ作業できるため、無理のない働き方がしやすいでしょう。また、Webライターのような一人で進められる仕事も向いています。文章作成の業務は、自宅で取り組める場合も多く、コミュニケーションの負荷を抑えながら働ける点が魅力です。自分自身の特性に合った環境を選ぶことで、長く続けやすい働き方が見つかるはずです。
適応障害のある方には、柔軟に働ける環境が適していることが多いです。フレックス制は、自分の体調に合わせて始業時間を調整できるため、朝の体調に波がある方にとって大きなメリットがあります。無理のない時間に仕事を始められることで、負担を減らしながら業務に取り組めます。
テレワークも有効な働き方です。通勤の負担がなく、静かな環境で作業できるため、集中しやすく心身へのストレスを抑えやすい特徴があります。人との接触が少ない点も安心につながるでしょう。また、フリーランスとして働く方法も選択肢のひとつです。仕事量や働く場所、働く時間を自分で調整できるため、体調に合わせた働き方が実現しやすい点が魅力です。柔軟な働き方を選ぶことで、無理なく自分らしく働き続けるための土台が整うはずです。

適応障害で仕事を休むと、「収入はどうなるのか」「治療費が負担にならないか」といった不安が出てきます。そのようなときに知っておきたいのが、公的な支援制度と相談機関です。うまく組み合わせて活用することで、心身の回復に集中しやすい環境をととのえやすくなります。
代表的な支援制度は次のとおりです。
傷病手当金:会社の健康保険に加入している方が、病気やけがで働けないときに支給される手当
失業保険(基本手当):退職後に一定の条件を満たした場合に、ハローワークから受け取れる給付金
自立支援医療制度(精神通院医療など):通院にかかる医療費の自己負担を軽くする制度
あわせて、相談や職場復帰を支えてくれる機関もあります。
リワーク(職場復帰支援):復職に向けた体調づくりや働き方の見直しをおこなうプログラム
就労移行支援事業所:一般就労を目指す方に、仕事の練習や就職活動の支援をおこなう福祉サービス
精神保健福祉センター・保健所:こころの不調や生活、仕事について相談できる公的機関
これらの制度や機関は、一人で限界まで頑張る前に頼れる土台です。主治医や家族、相談機関と一緒に、自分に合う支援を早めに確認しておくことが大切です。
リワークは、うつ病や適応障害などで休職している方を対象に、職場復帰を支えるために用意されたプログラムです。医療機関や専門の支援機関が実施しており、グループワークや個別面談、職場を想定した作業練習などを通して、「ふたたび働き続ける力」を育てる場として活用できます。
リワークでは、これまでの働き方やストレスのかかり方を振り返りながら、自分に合った仕事の進めかたや休みかたを一緒に考えます。また、生活リズムを整えるトレーニングや、同じような悩みを持つ仲間との分かち合いの時間が用意されていることも多いです。そのなかで、自分のペースで働く感覚を少しずつ取り戻していきます。
医療機関型のリワークだけでなく、就労支援事業所が提供するリワーク的なプログラムもあります。どのような内容か、どのくらいの頻度で通うのかは実施機関によって異なるため、見学や体験利用を通じて自分に合う場所かどうかを確かめると安心です。復職を焦るよりも、リワークを活用して準備を進めるほうが、再休職のリスクを下げやすくなります。
一般就労を目指したいものの、「ブランクが長くて不安」「体調を見ながら仕事の練習をしたい」という場合は、就労移行支援事業所などの就労支援サービスが役立ちます。就労移行支援では、障害のある方が自分に合った仕事に就き、続けていけるように、さまざまなプログラムが用意されています。
たとえば、毎日の通所を通じた体調管理の練習、ビジネスマナーや報連相の練習、グループワークでのコミュニケーションスキルの向上などが挙げられます。また、履歴書の作成や面接練習、企業見学、実習の調整など、具体的な就職活動の支援も受けられます。
さらに、就職したあとの定着支援をおこなっている事業所も多く、入社後に困りごとが出てきたときに、事業所のスタッフが企業と一緒に調整してくれる場合もあります。利用には一定の手続きが必要ですが、費用負担が軽くなる制度もあるため、まずはお住まいの地域の相談窓口や事業所にお問い合わせてみるとよいでしょう。

適応障害があっても、適切な治療と環境調整が整えば仕事を続けることは可能です。たとえば、業務量の調整や静かな作業スペースの確保、こまめな休憩を取り入れることで働きやすくなった事例があります。主治医や職場と相談しながら、自分に合う働き方を模索することで、長く働き続けられる場合もあります。
適応障害を理由に休職しただけで解雇されることは、労働法の観点から一般的に認められていません。休職制度が社内規程に定められている場合は、その期間内であれば雇用は守られます。正しい手続きを踏みながら休職し、必要な治療に専念することで、復職の機会を確保できます。不当解雇に該当する可能性がある場合もあるため、不安があるときは専門機関へ相談すると安心です。
適応障害で仕事が続かない背景には、環境や体調など複数の要因が関係しています。必要に応じて休職や環境調整、転職を検討し、自分に合う働き方を選ぶことが大切です。一人で抱え込まず、医療機関や支援機関へ相談することで適切なサポートにつながりやすくなります。
病気や障害のこと、暮らしのこと、
お金や社会保障制度のこと、そして仕事のことなど、
何でもご相談ください。
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