通院しながら働く。大切なのは継続すること -うつ病のサインや病院の選び方-
うつ病といえば、気力をなくし、何もやる気が起きず、やむを得ず仕事を休まなければならなくなる、という印象が強いかもしれません。実際、このような症状はうつ病によく見られますが、症状にも程度があり、治療を受けながら仕事を続けることも可能です。
今回は、早く気づいておきたいうつ病のサインや、病院選びのポイントについて紹介します。
うつ病といえば、気力をなくし、何もやる気が起きず、やむを得ず仕事を休まなければならなくなる、という印象が強いかもしれません。実際、このような症状はうつ病によく見られますが、症状にも程度があり、治療を受けながら仕事を続けることも可能です。
今回は、早く気づいておきたいうつ病のサインや、病院選びのポイントについて紹介します。
うつ病の症状は様々ですが、意外に知られていないのが身体からのSOSです。
たとえば頭痛、肩こり、食欲不振やめまいなどはよく見られる症状です。これらの症状は、仕事のし過ぎで疲労がたまっている不調感と考える人も多いのではないでしょうか。
また、自宅でもなかなかリラックスできず、夜ベッドに入っても寝つきがよくないこともあるかもしれません。気持ちは早く眠りにつきたいのに、2~3時間も目がさえたまま、というのはストレスに感じるものです。
気分の落ち込みや、やる気が出ない、集中力が続かない、といったことも含めて、上記のような身体のサインにも気を配ってほしいと思います。
うつ病はこころの病気とイメージされやすいですが、身体にも影響が出るものです。症状がいつまでも改善しないようでしたら、まずはかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。
いちばん、お伝えしたいことは、どんな病気でも同じですが、症状が重くならないうちに治療を受けるということです。これはうつ病でも変わりません。
最近めっきり気力がなくなったと感じていたり、うつ気分に悩まされている状態が2週間以上続くようでしたら、まずは足を運びやすい病院を受診してみてください。うつ病の早期発見につながります。
症状が軽いうちでしたら、治療を受けながら働き続けることも可能です。
うつ病の治療方法はいろいろありますが、主となるのはやはり薬物療法になります。薬を飲むことで症状を和らげる治療法です。
自分に合った薬を服用していれば、つらい症状も落ち着きます。症状が治まっていれば、仕事を続けることもできるでしょう。重症化し、やむを得ず仕事から離れなければならなくなるという事態を防ぐことができます。
うつ病は珍しい病気ではありません。
こころのサインはもちろん、身体のほうもSOSを発していないか、定期的に振り返り、うつ病の早期発見に努める習慣を身につけてほしいと思います。
こころの症状、身体の症状、どちらにしても、うつ病の兆候が出ているときは早めに病院にかかることをお勧めしてきました。
最初は通い慣れたかかりつけ医でも構わない、というのもお伝えしたとおりです。
このように書くと「精神科や心療内科でなくてもいいの?」という疑問がわくと思いますが、最初の受診は必ずしもこだわる必要はありません。
最近、ようやくこれらの病院の敷居も下がってきましたが、今でもまだ受診するのは勇気がいる、という方も多いと思われます。
受診をためらい、症状が悪化してからでは、治療を受けるあなたもつらい思いをするだけです。
しかし、通い慣れた病院ならば、この敷居もぐっと下がります。あなたをよく知るかかりつけ医には話もしやすいでしょうし、必要に応じて精神科や心療内科へ紹介してくれますので、あなた自身で病院探しから始める気持ちの負担も少なくなります。
まずは早めの受診を目指し、馴染みのあるかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。
その際に、たとえば、自分は女性だから女性の医師がよいなど、希望を伝えるのも大切です。漠然と「どの先生でもよい」でも大丈夫ですが、自分がこころを開きやすい主治医のイメージを具体的に持っておくと、かかりつけ医に伝えやすいかもしれません。
精神科や心療内科の治療は医師との相性や信頼関係に大きく左右されます。
うつ病をわずらっているときは、ただでさえ、対人関係に過敏になったり、普段以上に人の目が気になります。主治医に対してそのような不信感を抱きながら診察を受けるのは、あなたにとっても気持ちの負担になるはずです。
理想の主治医を探し求めて、病院を転々とするのは好ましくありませんが、信頼のおける医師を見つけることは、うつ病や他の精神疾患の治療においてもとても重要なことです。
継続は大切だ、というのは言うまでもないことのように思います。
しかし、これが意外に難しいのです。
治療途中で、少しよくなったといって、通院を中断しない。
仕事が忙しくなったからといって、受診を後回しにしない。
つまり、通院治療を継続することです。定期的にきちんと診察を受け、治療を続けることが回復への近道なのですが、改めてこのような説明を受ける機会は少ないのではないでしょうか。
せっかくよい主治医と巡り合えても、診察や服薬が不規則では治療の効果は見込みにくいです。服薬を例にあげてもわかりやすいでしょう。薬を服用することで症状が抑えられていても、途中で止めてしまえば元に戻ってしまいます。症状が再発するのです。
症状が悪化するまでは状態も落ち着いているので、薬や治療の効果を意識しにくいものです。頭ではきちんと通院しなければならないとわかっていても、仕事が目の前に積みあがっていると、そちらを優先したくなります。
少しくらいなら、治療を受けなくても何とかなると考えるのかもしれません。
それよりも、思うように仕事がはかどっていない。
遅れを取り戻すために、残業したい。
病院に通う時間ももったいなく感じられ、つい通院を先送りにしてしまう。
このような気持ちに駆られないでしょうか。
職場に迷惑をかけたくないビジネスパーソンがとってしまいがちな行動です。
しかし、ここで振り返ってほしいことがあります。
能率が下がっているとはいえ、残業ができるほど回復したのは、何がきっかけでしょうか。
何があなたの体調を維持してくれているのでしょうか。
改めて、最初に受診したときの気持ちを思い出してほしいと思います。
心身の不調感に悩み、藁にも縋る思いで病院の敷居をくぐったはずです。辛抱強く治療を受けた甲斐があり、規則正しく服薬を続けたおかげで、あなたは今働けているのではないでしょうか。
ダイエットでも同じことが言えますが、目に見えて効果が出ているときは積極的に努力をしようとします。しかし、ある程度体重が落ち着いて、効果が見えにくくなるとモチベーションは低下して、それまで続けていた努力を諦めてしまうこともあります。
つい受診を後回しにしてしまうのは、このダイエットの心理と同じです。
治療を継続し、状態が落ち着いてきた時期だからこそ、その効果を感じにくくなります。すると、少しくらいいいか、の気持ちがわいてくるのです。
ここで治療を中断しないためにも、これまで続けてきた努力を一度振り返ることが大切です。そのために、お薬手帳を活用するのもよいでしょう。
通院がおっくうになったらお薬手帳を見直し、辛抱強く続けてきた努力を振り返ります。せっかくここまでよくなったのだから、最後まで頑張ろうというモチベーションにつながります。
時間のかかる治療を続けることは並大抵の努力ではありません。放り出さずにいた自分を誉め、自己効力感を高めましょう。自己効力感とは「自分はやっていける」という課題に対する自信や期待感です。これは過去の成功体験により高まります。これまで気長に続けてきた治療はまさにあなたの成功体験であり、今後も続けていける自信になるのではないでしょうか。
回復までの道のりは長く感じられるかもしれませんが、これらの工夫をすることにより、治療の中断を防ぐことができます。
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