就労移行支援事業所とは? 障害のある方の「働きたい」をサポートします

2024/8/19 最終更新

就労移行支援事業所って、何をしているところなのか、どんな人に向けてどんなサービスをおこなっているのか、いまいちピンとこないかもしれません。

しかし、実は就労移行支援事業所は全国に3300ヵ所以上あり(厚生労働省 令和2年社会福祉施設等調査の概況より)、利用者数は全国で3万人を超えています。

このように障害のある方々が就労移行支援事業所を利用して一般企業へ就職する人は年々増えています。

就労移行支援事業所とはどのような場所なのか、概要を紹介します。

  • 就労移行支援事業所とはどんなところ?

    就労移行支援事業所とはどんなところ

    就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつです。

    障害のある方が就労に向けたトレーニングをおこない、働くために必要な知識やスキルを学習し、就職後も職場に定着できるようサポートをおこないます。

     

    「働きたい」という気持ちはあるものの、さまざまな悩みや不安から、誰にも相談できなかったり、なかなか踏み出せないという方は多いかもしれません。

    そんな方の「働きたい」という気持ちに寄り添いながら、一つひとつ課題を解決しながら、働き続けられるように支援するサービスです。

     

    これまでに働いた経験がない方も、就労経験がある方も、基本となるビジネスマナーや、コミュニケーションスキルなど、長く働くために必要となる実践的なスキルを習得できます。

    この他にも、模擬業務、企業体験実習なども経験しながら、就職活動、就労、職場定着までをサポートするのが就労移行支援事業所です。

  • 就労移行支援事業所を利用できる対象者は?

    就労移行支援事業所を利用するには、下記3つの条件を満たす必要があります。

     

    原則18歳以上、65歳未満の方

    障害(身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・特定難病)のある方

    一般企業での就労を希望する方

     

    障害者手帳をお持ちの方だけでなく、お持ちでない方も自立支援医療受給者証や医師の診断書(意見書)、があれば申請手続きが可能です。

    サービスを利用する際には受給者証の発行が必要になりますが、自治体によっては申請から発行まで1~2ヵ月かかることもあるので注意が必要です。

  • 就職に向けてアピールポイントをつくれる!

    就職に向けたサポートを受けられることだけが就労移行支援事業所のメリットではありません。

    企業へアピールする際の実績を作ることにもつながります。

     

    たとえば、通所率。

    毎日事業所に通うことは、通勤のようなものと、とらえると想像しやすいかもしれません。

    就労移行支援事業所へ安定的に通所できるようになれば、企業側も「本採用後の勤怠は安定しそうだ」と、具体的な就労イメージを持つことができます。

    企業の人事・採用担当者からすると、勤怠が安定しているかは採用を見極める大事なポイントとなります。

     

    企業にしてみれば、障害の有無に関わらず、欠勤が多くなりがちな従業員のサポートは難しいものです。

    突発的な欠勤が続くと、企業側もどのように仕事を割り振ればいいかわかりません。

    その仕事に納期があるものなら、どこまで業務を依頼していいのかも判断がつきにくくもなります。

    このように企業視点から考えると、安定した通所ができている実績がアピールポイントにつながることを理解できるのではないでしょうか。

     

    就労移行支援事業所で最初は体調が安定せず、思うように通えなかったとしても心配いりません。

    徐々に生活リズムを整え、毎日通うことができるようになれば、調子が悪い時期を乗り越えた成功経験とともに、週5日フルタイムで働ける状態であるアピールポイントをつくれます。

    また、自分の「障害を理解し、どのような配慮が必要なのか伝えることができる能力」を身につけることもできます。

     

    就労移行支援事業所では、「障害について理解するプログラム」や「それを他者に伝えるプログラム」をおこなうことがあります。

    合理的配慮がある企業でも、配慮を難しく感じる場面はどうしてもあります。

    どんな場面で、どの程度の配慮が必要なのか、一人ひとりに異なるのでなおさらです。

    そのため、自分の障害に関する説明や必要な配慮を説明できるようにしておくことで、会社側のサポートを得やすくなることや、無理のない働き方、安定した就労継続につなげることができます。

     

    このように障害をお持ちの方が、一般企業での就職や障害者枠を活用した障害者雇用での就労を目指す場合、就労移行支援事業所を利用することで多くの活用メリットがあります。

    利用料について気になる方は『就労移行支援の利用料はどのくらいかかる? 事業所選びの参考にしたい!』も参考にしてください。

  • まとめ

    就労移行支援事業所とはどんなところか、少しイメージできたでしょうか。

    一言で表現すると、「就職をしたい」と意欲のある方へのサポートをおこなっています。

     

    利用する方の立場からみれば、「安定して長く仕事をするうえで、自分はどんなスキルを身に着けたらいいのか、どんなサポートが必要なのかを知ることができる場所」ともいえます。

    自分の障害についてアドバイスを得ながら理解を深めていけば、就職活動するときや仕事を続けるうえでもプラスになります。

    お住いの地域で気になる就労移行支援事業所があれば、ぜひお問い合わせしてみて下さい。

     

     

    ※コラム中の画像は全てイメージです

執筆:コラム編集部
執筆:コラム編集部
医療・福祉分野で主に障害のある方の支援を10年以上従事。これまでの経験とノウハウを活かし、さまざまな事情から不調になり休職したり、働けなくなったりした方向けに、復職や就職などの“働く”をテーマに少しでも役立つ情報を執筆。
監修:藤澤 佳澄
監修:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。