テレワークの浸透はメリットと同時にデメリットも生み出します。
職場に出勤するという行為は生活リズムを整えるだけでなく、自分がそこで何かしらの役割を果たしているという充足感を与えてくれました。もちろん、在宅勤務でも仕事をしていることに変わりはないので、このような充足感を得られると考えるのが普通です。
ところが、不思議なもので、職場という集団のなかで勤務するのと、個人(1人)で勤務するのとでは、安心感が違うのです。心理学者のマズローは、人間には帰属欲求が備わっていると提唱しています。
帰属欲求とは集団や組織の一員として存在することで、つながっている感覚や、受け入れられている感覚を得たいというものです。
この欲求が満たされないと、人は孤独を感じ、他者からの評価や対人関係に対する不安といった社会的不安を感じるようになります。
このような不安は強いストレスとなり、うつ病などを引き起こすメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
集団のなかにいれば、誰かが不調に気づいてくれるかもしれませんが、孤立した状態ではそれも難しいでしょう。
家族と同居している場合は家族の援助が得られますが、独居の場合はそうもいきません。
独居のビジネスパーソンの場合、特別注意が必要なのはこのためです。
テレワークを中心とした勤務体制の場合は、意識的につながりを作ることが重要です。毎朝の朝礼や定期的なミーティング、可能であるなら、雑談のための場をオンライン上で準備するのも効果的です。
そうすることで、職場のうつ病になるかもしれないメンタルヘルス不調者にいち早く気づくこともできますし、個々のメンバーも集団のなかで働いているという意識が高まり、不安感が低減します。
もし、あなたが今、まったく孤立した状況で働いていると感じていたら、信頼できる相手に相談してください。自分のメンタルヘルスを守るために、このような場を設けてほしいと依頼してもよいと思います。
今、自分が置かれている環境を見直してください。働いているけれども、一日誰とも口をきかず、顔を合わせることもない、ということはありませんか。
もし、そのような環境で勤務しているなら、意識的に人とのかかわりを持つように心がけてください。
職場の同僚でも、プライベートな友人とでも構いません。人との結びつきというあたたかな安心感があなたをメンタルヘルス不調から守ってくれるはずです。