就労支援A型とは? 仕事内容と給料・利用方法を徹底解説【B型との違いも】
2025/7/23 最終更新
就労継続支援A型は、障害や難病のある方が企業などで働くことが難しい場合に、雇用契約を結んだうえで支援を受けながら働くことができる福祉サービスです。
この記事では、A型事業所の仕事内容、給料、利用対象者、B型との違い、利用手続きの流れなどをわかりやすく解説します。
2025/7/23 最終更新
就労継続支援A型は、障害や難病のある方が企業などで働くことが難しい場合に、雇用契約を結んだうえで支援を受けながら働くことができる福祉サービスです。
この記事では、A型事業所の仕事内容、給料、利用対象者、B型との違い、利用手続きの流れなどをわかりやすく解説します。
病気や障害のこと、暮らしのこと、
お金や社会保障制度のこと、そして仕事のことなど、
何でもご相談ください。
就労継続支援A型とは、障害や難病などが理由で、一般企業で働くことに不安や難しさのある方を対象とした障害福祉サービスです。
この制度は障害者総合支援法にもとづき、利用者が事業所で支援を受けながら働ける場所を提供することを目的としています。
A型で働くことを通じて職業スキルの向上をはかり、将来的には一般就労への移行を目指すこともできます。
この制度の主な特長は以下のとおりです。
事業所と利用者の間で雇用契約を結ぶ
最低賃金が保証される
就労継続支援A型の利用については、原則として18歳以上65歳未満の年齢制限に加えて、以下のいずれかの条件を満たす方が対象です。
過去に企業などで働いた経験はあるものの、年齢や体力の面で一般企業での就労が難しくなった
就労移行支援事業所などを利用して就職活動をおこなったものの、雇用にいたらなかった
特別支援学校などを卒業して就職活動をおこなったが、就職に結びつかなかった
継続して就労しているが、障害の特性や病状の変化によって一般企業での勤務が難しくなり、離職してA型事業所の利用を希望している
これらの条件に加えて、最終的には市区町村が利用の必要性を判断し、サービスの支給が決定されます。
参考:厚生労働省 令和2年9月「就労継続支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」
就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、主な違いは雇用契約の有無です。
A型では利用者と事業所が雇用契約を結ぶのに対して、B型は雇用契約を結びません。これによって働き方や賃金(工賃)の仕組みが大きく異なります。
名称 |
就労継続支援A型 |
就労継続支援B型 |
雇用契約 |
あり |
なし |
賃金 |
給料(最低賃金以上を保証) |
工賃(最低賃金の保証なし) |
年齢制限 |
原則18歳~65歳未満 |
年齢制限なし |
対象者 |
一般就労は困難だが、一定の支援があれば雇用契約にもとづいて働ける見込みのある方 |
A型の利用が難しい方や、短時間・自分のペースで働きたい方など |
働き方 |
契約にもとづく出勤(週20時間以上が目安) |
比較的自由(週1日、1日数時間からでも可能) |
利用期間 |
原則として65歳に達する前日まで |
定めなし |
A型は働くことに主眼が置かれ、労働者として安定した収入を得ながら一般的な企業への就労やスキルアップを目指します。一方、B型は日中の活動の場としての側面が強く、個人の体調や障害の特性に合わせて、自分のペースで無理なく生産活動に参加することを目的としています。
就労継続支援A型では事業所と雇用契約を結ぶため、労働の対価として時給に応じた給料が支払われます。
A型では労働基準法や最低賃金法が適用されるため、時給は各都道府県の最低賃金額以上が保証されます。
厚生労働省が令和5年度におこなった調査の結果では、A型事業所の全国平均給料は月額86,752円でした。ただしこの金額はあくまで目安であり、実際は地域や勤務時間、控除の種類によって変動します。
就労継続支援A型の利用者と事業所が雇用契約を結ぶことを基本としています。これにより利用者は法的に労働者と位置づけられ、労働基準法や最低賃金法といった法律が適用されるのが大きな特長です。
給与体系は「時給×労働時間」で明確に計算され、その時給は国が定める都道府県ごとの最低賃金額を必ず上回ることが法律で定められています。たとえば東京都の最低賃金が1,163円であれば、都内のA型事業所で働く方の時給も必ず1,163円以上です。
勤務時間は利用者の体調や特性に配慮されている場合が多く、1日4〜5時間、週に20時間程度の勤務が一般的です。もちろん事業所によっては、それ以上の勤務も可能です。
また一般の会社員と同様に、毎月の給料総額からは社会保険料(健康保険、厚生年金など)や雇用保険料、そして所得税・住民税といった税金が控除されます。そのため実際に受け取る手取り額は、総支給額からこれらの控除額を差し引いた金額となります。
厚生労働省の調査によると、令和5年度の就労継続支援A型事業所における全国の平均給料は月額86,752円でした(令和5年度の調査)。ただしこの金額はあくまで全国平均であり、地域や事業所の仕事内容、勤務時間によって大きく異なります。
都市部では最低賃金が高い傾向にあるため給料も高くなりやすく、地方ではその逆の傾向が見られます。自分の希望する地域の事業所がどのくらいの給料水準なのか、見学や体験利用の際に確認するとよいでしょう。
また業務の内容によっても賃金の水準は異なります。たとえば専門性の高い作業(Webサイト制作やイラストデザインなど)を請け負っている事業者では、給料も高くなる場合があります。
就労継続支援A型の全国での平均月収は約8万6千円であり、この給料だけで一人暮らしの生計を立てることは、家賃や生活費を考えると簡単ではないのが実情です。
多くの方は障害年金や各種手当、家族からの援助などを組み合わせて生活しています。ただしA型事業所での経験をステップとして、より給料の高い一般就労を目指すことも可能です。
また福祉サービスのひとつ、グループホーム(共同生活援助)を利用することで、家賃や食費などの生活コストを抑えながら地域で暮らすという選択肢もあります。
A型事業所のスタッフや相談支援専門員とよく相談しながら、自分に合った生活設計を立てることが重要です。
就労継続支援A型事業所では、利用者の障害特性や希望に応じてさまざまな種類の仕事を提供しています。
事務作業から身体を動かす軽作業、専門的なスキルを活かせる仕事まで、その内容は多岐にわたります。
ここでは、A型事業所で提供されているおもな仕事内容や働き方について紹介します。
A型事業所でおこなわれている仕事は、事業所の運営方針や地域の産業によってさまざまです。
以下に代表的な職種と業務内容の例を挙げます。
事務・データ入力:パソコンを使ったデータ入力、書類の作成・整理、電話・来客応対、郵便物の発送など。企業の事務部門から請け負う仕事が中心です。
軽作業・製造 部品の組み立て:製品の検品・梱包、シール貼りなど。工場内や事業所内の作業スペースで、ライン作業や個別作業をおこないます。
清掃・施設管理:オフィスビルや商業施設、マンションなどの共用部分の清掃、ベッドメイキングなど。チームでおこなうことが多い仕事です。
農業・園芸:野菜・果物やハーブの栽培、収穫、袋詰め、販売など。自然のなかで体を動かす仕事です。
飲食・調理補助:事業所が運営するカフェやレストランでの接客、調理補助、洗い物など。食品製造(パン、お菓子など)をおこなう事業所もあります。
Web・IT関連:Webサイトの制作・更新、デザイン、プログラミング、ライティングなど。専門的なスキルを活かせる仕事です。
これらの他にもクリーニング、eコマースサイトの運営、動物の世話など、時代に即した仕事を提供する事業所も増えています。
A型事業所の勤務時間は事業所や利用者の状態にもよりますが、1日あたり4~8時間、週に20~40時間程度が一般的です。
多くは1日4時間・週5日(合計20時間)といった短時間勤務の形態をとっており、利用者が体調などに合わせて無理なく働き続けられるよう配慮されています。もちろんフルタイム(1日8時間・週40時間)に近い形で働ける事業所もあります。
また通院などのために、勤務時間の調整や休暇取得について柔軟に対応してくれる事業所がほとんどです。自分の希望する働き方が可能か、事前に確認しておくとよいでしょう。
条件によっては在宅での勤務(テレワーク)も可能です。在宅ワークが認められるのは、感染症対策のほか、利用者の障害特性などにより通所して訓練を受けることが困難な場合などです。
たとえば対人関係に強い不安を感じる方や、通勤が大きな負担となる方などが対象となります。ただし在宅ワークを導入している事業所はまだ多くなく、仕事内容もデータ入力やWeb制作など、在宅で完結できるものに限られます。
希望する場合は在宅利用が可能か、どのようなサポートが受けられるかを事業所に確認しておく必要があります。
就労継続支援A型を利用するためには、いくつかの申請の手続きが必要です。
利用までの基本的な流れは、まずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所などに相談し、次に「サービス等利用計画」を作成して申請、最後に事業所と契約を結んで利用開始という手順で進みます。
ここでは相談から利用開始までの具体的なステップや、申請に必要な書類などについて詳しく解説します。
1 市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所で就労継続支援A型の利用希望を伝え、予約したうえで初回相談をおこないます。ここでサービスの概要説明を受け、地域の事業所の情報を集めましょう。
2 事務所の見学・体験をおこなって利用したい事業所が決まったら、相談支援専門員と一緒に「サービス等利用計画案」を作成します。今後の目標や、そのために必要な支援内容を具体的に計画に盛り込みます。
3 必要書類を市区町村に提出して利用を申請します。その際、必要に応じて障害支援区分の認定調査がおこなわれます。これは他の介護サービスの利用も希望する場合で、A型の利用のみでは必須ではありません。市町村の認定が決定すると「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
4 受給者証を持って、利用する事業所と雇用契約および利用契約を結びます。契約が完了すればA型事業所での活動開始です。
特に利用計画の作成にかかわる相談支援専門員は、利用手続き全般を支える専門家です。利用開始後も定期的な面談など、継続的な支援をおこなう伴走者のような存在です。
A型の利用を申請する際に、一般的に必要となる書類は以下のとおりです。
ただし市区町村によって異なる場合があるため、必ず事前に窓口で確認してください。
支給申請書
サービス等利用計画案(相談支援専門員とともに本人が作成)
障害の事実を証明する書類(障害者手帳、障害年金の証書、自立支援医療受給者証、医師の診断書などのいずれか1件)
本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、顔写真付きの身分証明書)
マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、またはマイナンバーが記載された住民票の写しなど)
これらの書類をそろえて、市区町村の障害福祉担当窓口に提出します。
申請から受給者証が交付されるまでには、1~2ヵ月程度の時間がかかることが一般的です。計画的に準備を進めましょう。
障害福祉サービスの申請手続きは国の法律にもとづいておこなわれますが、実際の運用は市区町村ごとに異なります。申請書の様式、必要となる書類の種類などが異なる場合があるため注意が必要です。
スムーズに手続きを進めるため、準備を始める前に必ずお住まいの市区町村の窓口へ直接問い合わせて、その自治体に対応したルールや必要書類を確認しましょう。
就労継続支援A型は福祉サービスですが、利用者自身がサービス利用料を支払う場合があります。ただし前年の世帯所得に応じて毎月の負担額には上限が設けられています
生活保護受給世帯:0円
市町村民税非課税世帯:0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満):9,300円
上記以外(所得割16万円以上):37,200円
多くの場合、利用者負担は給料の範囲内に収まるため自己負担なく利用できます。
昼食代や交通費などの実費が別途必要な場合もあるため、契約前に確認しましょう。
自立支援医療や障害年金の有無にかかわらず、利用者負担額は上記の区分で決定されます。
就労継続支援A型は、障害や難病のある方が事業所との雇用契約のもとで支援を受けながら働くことができる福祉サービスです。
比較的安定した給料で、スキルアップや一般企業への就職といった目標を目指せるのが大きな特長です。提供される仕事内容や勤務形態は事業所で異なるため、見学や体験利用を通じてご自身の希望や特性に合った場所を見つけることが重要です。
利用に関心のある方は、まずはお住まいの市区町村の窓口や相談支援事業所に相談しましょう。
※コラム中の画像は全てイメージです