大人も危ないゲーム依存症(ゲーム障害)! どうすれば止められる? その治療法とは

2024/8/29 最終更新

WHO(世界保健機構)は2019年5月にいわゆるゲーム依存を“ゲーム障害”の名前で新たな依存症分類項目として追加しました。

ゲーム障害は新しい概念で、まだまだこれからの研究がまたれる分野ですが、私たちには非常に身近なものになるでしょう。

子どもの問題と考えがちなゲーム依存症(ゲーム障害)について、今回は大人の目線から紹介したいと思います。

  • どうなったらゲーム依存? 依存は病気なの?

    このコラムでは状態をイメージしやすいように、ゲーム障害を以降“ゲーム依存”と表記します。

    では、ゲームのやりすぎ(過剰使用)とゲーム依存の境界線はどこにあるのでしょうか。

    明確な分かれ目は見えにくいものです。

     

    ゲームのやりすぎで、ゲームのコントロールが効かなくなっている

    日常生活に支障をきたしている

     

    これらを満たすとき、ゲーム依存が疑われると言っていいでしょう。

     

    私たちの生活にはゲームがあふれ返っており、一度も触ったことがないという人はまれなはずです。

    ただし、睡眠や食事をとらず健康を害したり、収入に見合わないお金をつぎ込んで、ゲームをやっている人となると限られてくるはずです。

    ゲームをやり込むために夜更かしをし、朝方まで起きていた、なんて生活が続いていないでしょうか。

    結果、朝起きることができず遅刻スレスレで出勤し、寝ぼけ眼で一日過ごすなんてことはないでしょうか。

    ゲームのために昼夜逆転し、出社するのが難しい。

    日常生活に支障をきたすという状態はこのようなイメージであらわされます。

    そして、日常生活がままならないほど、ゲームにのめり込んでいる状態を“依存”、つまり病気と考えます。

  • どうしてゲーム依存するんだろう? わかっているのに止められない

    どうしてゲーム依存するんだろう? わかっているのに止められない

    ゲームにはインターネットを介して楽しむオンラインゲームと、端末(デバイス)だけで楽しめるオフラインゲームがあります。

     

    楽しみ方は個々に違いますが、よりのめり込みやすいオンラインゲームについて見てみましょう。

    オフラインゲームはゲームソフトを用いて楽しむもので、ソフトをやり切ってしまえば完結します。

    最初に費用はかかりますが、終わりがあるものなので、オンラインゲームより依存しにくいです。

     

    一方、オンラインゲームは、最初は無料からスタートできますが、ゲームの完結が分かりづらいです。

    メインストーリーをクリアしても、追加コンテンツなどがアップロードされ、遊び続けられます。

     

    また、オンラインゲームはイベントごとに貴重なアイテムを入手できたり、キャラクターを成長させたりすることができます。

    ログインボーナスがあり、毎日回収する仕組みが作られていたり、ガチャと呼ばれるギャンブル性が高いシステムがあります。

    他のゲーマーとの競争がある反面、グループを作ってプレーすることができます。

     

    上記に挙げたオンラインゲームの要素はオンラインゲームの魅力でもありますが、自制がきかないと依存を促進させかねません。

    魅力的だからこそハマってしまいます。特にオンラインゲームはそんな風に作られているのです。

  • ゲームとインターネットの密な関係。ゲーム依存やネット依存に陥りやすいので注意が必要?

    ゲームとインターネットの密な関係。ゲーム依存やネット依存に陥りやすいので注意が必要?

    ゲームとインターネットは密接な関係にあります。

     

    たとえば、動画共有サービスを活用し、ゲーム実況と呼ばれるゲームプレイ動画を楽しめます。

    卓越したゲームプレイヤーから技術を学び、自分のスキルアップを望めます。

    自分のスキルが上がっていくと、動画を視る側から、動画を配信するほうに転身する人もいるでしょう。

    動画配信までするようになると、インターネットのヘビーユーザーと言えるかもしれません。

     

    ゲームの公式SNSアカウントから情報を収集したり、自分から情報発信したり、同じ趣味の仲間と繋がるという楽しみもあります。

    グループを作り、交流を楽しむのにSNSを活用しない手はありません。

    動画共有サービスやSNSはインターネットのアプリケーションですが、ゲームと組み合わせることでいくらでも楽しみを見出せます。

    楽しみが大きい分、ゲームの情報を追いかけているうちに、気づけばネット依存に足を踏み入れている、なんてことがないよう注意が必要です。

  • ゲーム依存とネット依存。似ているけれど、どう違うの? 

    ゲーム依存とネット依存。似ているけれど、どう違うの? 

    ゲーム依存の具体的なイメージはついたかもしれませんが、ネット依存との違いは想像できるでしょうか。

    ネット依存という枠組みで見たときに、そのコンテンツは多岐に渡ります。SNSや動画サイト、オンラインゲームもそのひとつです。

    インターネットのコンテンツのなかでもゲームに依存する人が多いことから、ネット依存とゲーム依存を同一とする流れがあるようです。

    これはネット依存の定義がまだはっきりしていないためでもあり、ゲーム依存やネット依存が新しい概念だということがよくわかります。

     

    どちらにしても以下の困りごとが見られます。

     

    睡眠不足や仕事(学業)の不振などの生活面

    視力や頭痛に肩こり、運動不足といった体調面

    現実の友人が減ったり、スマホをとり上げられるとひどく怒るといった対人関係

     

    特に注目したいのが暴力に関する問題です。

    ゲームをとり上げられると、家族に暴力をふるったり、ものに当たることがあります。

    その結果、家族間の関係が悪化することもあり得ます。

    気をつけなければならないのは経済面の問題もです。自分の収入を超えた課金をするだけでなく、家族のクレジットカードで課金をし、家庭内でトラブルになることもあります。

    子どもなどは特に注意が必要ですが、大人でも金銭管理には気をつけなければなりません。

  • ゲーム依存の治療

    ゲーム依存の治療

    ゲーム依存の場合、主に通院治療がおこなわれます。

    専門医による診察にもとづき、治療方針を立てていきます。

    カウンセリング、デイケア、それでもよくならない場合は入院治療をおこないます。

     

    カウンセリングではゲーム依存について理解を深め、ゲームとの付き合い方について学んでいきます。

    「なぜ、自分はゲームに没頭してしまうのか」を整理することは、治療を進めるうえでとても重要です。

    ゲーム依存におちいりやすい人は対人関係について苦手意識を持っていることが多いと言われています。

     

    デイケアでは集団プログラムに参加することで、対人関係の能力を磨くことができます。

    グループで運動するなかで楽しみを見出したり、ディスカッションを通じてコミュニケーションスキルをアップさせることができます。

    ゲーム以外のコミュニティに居場所を見つけ、“減ゲーム”につなげていくことが大切です。

     

    というのも、ゲーム依存の人はゲームを通じて人間関係を構築しているかもしれません。

    現実社会で発散できないストレスをゲームで解消しているかもしれないのです。

    完全にゲームを止めてしまう“断ゲーム”は、そのようなゲーム依存の人の心のよりどころを奪うリスクをはらんでいます。

  • ほどほどのゲーム好きでいよう。減ゲームのすすめ

    ほどほどのゲーム好きでいよう。減ゲームのすすめ

    オンラインゲームに欠かせないインターネットはいまや生活の必需品です。

    スマートフォンも若い世代で持っていない人はほとんどいないでしょう。

     

    ゲームを断ち切ろうというのは環境を見回してみても土台無理なのです。

    大切なのは日常生活に支障をきたさないよう、うまくゲームと付き合っていくスキルです。

    そのためには、ゲーム依存という病気について理解を深めましょう。

     

    一人で解決しようと悩む必要はありません。

    専門機関にかかり、適切な治療を受けることが重要です。

    最寄りの精神保健福祉センターなどへの問い合わせから始めてください。

     

    自宅でゲームと家族とだけつきあっていたら、息がつまるかもしれませんが、誰かが間に入ってくれることでクッション役にもなってくれるでしょう。

    ゲーム以外にも徐々に楽しみを見つけることができていけば、そのときあなたにとってのゲームの価値は、それまでよりは少し小さなものになっているかもしれません。

    たくさんある楽しみのなかのひとつにすることができれば大成功です。

     

     

    ※コラム中の画像は全てイメージです

     

     

     

    参考:Webマーケターのいきかた図鑑SEOも広告も学べるWebマーケティングスクール【WEBMARKS】

執筆:藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。