躁鬱の周期はどのくらい? 双極性障害のきっかけと対策を解説
双極性障害における気分の波である躁鬱の周期はどのくらいなのでしょうか。
この記事では一般的な双極性障害の周期のパターン、症状が切り替わるきっかけ、そして周期を安定させるための具体的な対策についてわかりやすく解説します。
双極性障害における気分の波である躁鬱の周期はどのくらいなのでしょうか。
この記事では一般的な双極性障害の周期のパターン、症状が切り替わるきっかけ、そして周期を安定させるための具体的な対策についてわかりやすく解説します。
病気や障害のこと、暮らしのこと、
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双極性障害の躁状態やうつ状態が切り替わる周期や頻度は個人差が非常に大きく、典型的な周期や平均的な期間は存在しません。双極性障害I型・II型ともに、エピソードの発生頻度や持続期間は患者ごとに大きく異なり、数ヵ月から数年単位で変動することもあります。
また、1年間に4回以上の気分エピソードを繰り返す「急速交代型(rapid cycling)」も一部の患者にみられますが、これは全体の一部であり、必ずしも持続的な特徴ではありません。周期や頻度は治療や環境要因によっても変化します。
だれにでも起こり得る日常的な気分の浮き沈みと、双極性障害の波は、社会生活に深刻な支障をきたすかで区別されます。日常のできごとに対する数日程度の感情の動きとは異なり、双極性障害では理由なく気分が極端に高揚してトラブルを起こしたり(躁状態)、何をしても楽しめず仕事が手につかなくなったり(うつ状態)します。また、周囲から見ても明らかにわかるレベルの変化が顕著です。
受診の目安としては、以下のような状態が見られるときです。
異常に元気で活動的な状態が4日以上続く
気分の落ち込みや無気力感が2週間以上続く
気分の波が原因で、仕事や家庭での役割を果たせない
このような状態に気づいたら専門機関への相談をおすすめします。
双極性障害の周期は、いくつかの異なる状態が組み合わさって形成されます。
主なパターンは以下の4つです。
躁状態・軽躁状態:気分が異常に高揚する状態
うつ状態:気分の落ちこみが続く状態
混合状態:躁状態の症状とうつ状態の症状が同時にあらわれる状態
急速交代型:1年間に4回以上、躁状態やうつ状態などの変化をくり返すタイプ
双極性障害はこれらの状態の強さや持続期間によって、主にI型とII型に分類されます。
躁状態
気分が異常に高揚し、周囲が困惑するほどの行動をとります。たとえば「自分には力がある」といった誇大な考えをもち、何日も眠らずに活動し続けたり、大金を使ってしまったりと社会生活に重大な支障をきたします。この状態が1週間以上続くと入院が必要になることもあり、双極性障害I型の傾向があります。
軽躁状態
躁状態よりも程度の軽い高揚状態で、本人も周囲も「いつもより調子が良い」と感じる程度です。仕事がはかどる、社交的になって会話が弾むなど、一見すると良い状態に見えます。しかしこの状態も4日以上続くと診断基準のひとつとなり、うつ状態を伴う場合は双極性障害II型となり得ます。
うつ状態
I型・II型に共通してあらわれる状態で、2週間以上にわたって強い憂うつ感や興味・喜びの喪失が続きます。一日中ベッドから起き上がれなくなったり、食欲がなくなったり、逆に過食になったりすることもあります。
混合状態は、躁状態とうつ状態の症状が同時に存在する、非常に苦痛の大きい状態です。気分と行動が一致しないため混乱が強く、衝動的な行動につながる危険性もあります。
たとえば「気分はひどく落ちこんでいるのに、考えが駆けめぐって落ち着かず、じっとしていられない」といった症状があらわれます。また心では「消えてしまいたい」という思いがあるにもかかわらず活動性は高まっているため、突発的な自傷行為へいたるリスクも高い状態です。
この状態は、うつ状態と躁状態とを移行する途中で見られることが多くあります。症状が「怒りっぽい」「いらいらする」といった形で表現されることもあり、うつ病や不安障害、あるいは本人の性格の問題との誤解も少なくありません。症状が一定でないこともあって診断が難しく、専門医でも判断に時間を要することがあります。
急速交代型気分障害は、1年間に4回以上、躁状態・軽躁状態とうつ状態、混合状態といった気分変動をくり返す病型です。一般的な双極性障害が数ヵ月から数年単位で周期が変動するのに対し、急速交代型は数週間、ときには数日のうちに気分が大きく変動します。たとえば月曜日は活発に仕事をしていたのに、水曜日にはひどく落ちこんで出社できなくなる、といったことが年に何度もくり返されます。そのため気分が安定している期間はわずかで、本人も周囲も目まぐるしい変化に疲れてしまいます。
治療には標準的な気分安定薬が効きにくいこともあり、複数の薬を組み合わせるなど、より専門的で根気強い治療アプローチが求められるため、治療が困難なケースが少なくありません。
周期が切り替わるきっかけは、ひとつの原因に特定できるものではなく、不確実性と個人差が大きいとされます。
不確実性
周期が切り替わるのに、必ずしも特定のきっかけがあるとは限りません。以前は不調の引き金になったことが、別のタイミングでは影響しないこともあります。反対に、明確な理由がないまま不規則に周期が移行することも少なくありません。
個人差
人間関係のストレスで移行しやすい人もいれば、睡眠不足や生活リズムの乱れが影響しやすい人もいます。また就職や結婚といったことも、人によっては周期が切り替わるきっかけになります。
双極性障害の治療では気分の波を完全になくすのではなく、波の振れ幅を小さくし、周期を長くして安定した期間を増やすことが目標となります。
そのために以下の対策が重要です。
医師の指示どおりに服薬を続け、自己判断で中断しない
睡眠や食事の時間といった生活リズムを一定に保ち、体内時計を整える
過度な負担を避け、自分に合った方法でストレスに対処する
定期的に通院し、専門家(医師やカウンセラー)に心身の状態を相談する
薬物療法は、気分の波をコントロールするための土台です。医師から処方された気分安定薬などを継続して服用することは、再発リスクを低減するうえで非常に重要です。
薬を飲み続けることで、たとえば以前は数ヵ月ごとにおとずれていたうつ状態の間隔が長くなったり、躁状態になったとしても軽躁状態で済んで大きなトラブルを避けられたりする効果が期待できます。症状が落ち着いているときも、薬が水面下で波を抑え安定を支えているのです。
しかし調子が良くなると、自己判断で服薬をやめてしまうケースも後を絶ちません。薬を中断すると症状が再発する可能性が高く、かえって症状が不安定になったり、薬が効きにくくなったりすることがあります。副作用がつらい、飲み忘れてしまうといった問題がある場合は、自分で判断せずに必ず主治医に相談しましょう。
規則正しい生活は、双極性障害で乱れやすい体内時計のリズムを整え、気分の波を安定させるための土台となります。睡眠・食事・運動などの生活リズムが整うと、再発のきっかけとなるストレスへの抵抗力が高まる効果も期待できます。
特に重要なのは、毎朝同じ時間に起きることです。夜更かししてしまっても、起床時間は一定に保ちましょう。起きたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされます。食事は1日3食、できるだけ決まった時間にとるように心がけましょう。特に朝食は、心と体に活動のスイッチを入れる重要な役割を果たします。栄養バランスの取れた食事は、気分の安定にも良い影響を与えます。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲での有酸素運動を日中に取り入れると気分転換になり、夜の寝つきも良くなります。ただし激しい運動はかえって心身を興奮させ、躁状態の引き金になることもあるため、心地よい疲労感が得られる程度にしましょう。
うつ状態から回復して調子が良くなると、休んでいた期間を取り戻そうとつい頑張りすぎてしまうことがあります。この「頑張りすぎ」は負担となり、次の躁状態やうつ状態の引き金になることが少なくありません。再発予防のためには、調子が良いときこそ慎重に行動することが重要です。
まず「調子が良い=治療の終わり」ではないと理解して、仕事や家事のスケジュールを詰めこみすぎず、常に余力を残すことを意識してください。「もう少しできる」と感じたところで、あえて休息をとる勇気が大切です。予定を立てる際は、休息時間もあらかじめ組み込でおくと良いでしょう。
また自分ひとりで判断せず、信頼できる家族や主治医に、最近の活動量について客観的な意見を求めるのも有効です。自分の状態を過信せず安定したペースを維持することが、穏やかな期間を長く保つ秘訣です。
ストレスは双極性障害の症状を悪化させるため、不安や焦り、いらだちといった感情を溜めこまず、上手に付き合っていく方法を見つけることが大切です。
まずは自分がどのような状況でストレスを感じるかを把握し、可能であればその原因から距離を置くことが有効です。たとえば人混みが苦手なら外出の時間をずらす、SNSの情報に疲れたらデジタルデトックスの時間をつくる、といった方法です。気分が落ちこんだりいらいらしたりしたときは、深呼吸をする、好きな音楽を聴くなど自分に合ったリラックス法をいくつか持っておくと良いでしょう。
感情をひとりで抱え込まないことも重要です。身近な人に話しにくい場合は、主治医や臨床心理士、カウンセラーなどの専門家に相談してください。問題が小さいうちに早期対応することが、症状の悪化予防につながる鍵となります。
双極性障害の躁鬱周期は個人差が大きく、一定ではありません。また状態変動のきっかけはストレスや生活リズムの乱れなどが多いですが、不明なことも少なくありません。
この病気と上手につきあっていくためには、特に適切な服薬と生活リズムを守って周期を安定させることが重要な柱となります。専門家と相談しながら自身の状態を正しく理解し、適切な対策を根気強く続けることが、穏やかな日々を長く保つことにつながります。
はい、変動する可能性があります。
特に「急速交代型」では、1日のうちに躁状態とうつ状態が入れ替わることもあります。
ただし数時間程度の気分の変化は誰にでも起こり得ることであり、それが双極性障害の症状かどうかは専門医が慎重に判断します。
※コラム中の画像は全てイメージです
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