ストレスがたまると感情の起伏とは関係なく、思いがけないタイミングで涙が出ることがあります。その理由には下記のようなものが挙げられます。
これらの背景には、涙が作られる体の仕組みと自律神経が深く関係しています。次の項目でその働きについてくわしく解説します。
涙は目の上あたりにある涙腺という器官で作られ、まばたきによって目の表面に広がります。涙は目の乾燥を防ぎ栄養を届け、ゴミや細菌を洗い流すなどの大切な役割を担っています。突然出る涙は、主に以下のような種類に分けられます。
ストレスで急に涙が出る現象に直接関係するのは、このうち心理的な涙です。生理的な涙は異物を洗い流して目を保護するための生理的な反応で、その成分はほとんどが水分です。一方の心理的な涙にはストレスホルモンなどが含まれており、涙とともにこれらを排出することで気持ちを落ち着かせる役割があると考えられています。
特に悲しいわけでもないのに涙が出るのは、自律神経のバランスの乱れが関係するといわれています。自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、休息させる「副交感神経」の2つがあります。日中は交感神経が優位になって活動し、夜や休息時には副交感神経が優位になって心身を休ませるというように、バランスを取りながら体の機能を調整しています。
しかし強いストレスを受け続けると交感神経が過剰に働き続け、心身はずっと緊張状態になります。この緊張が限界に達したり、何かのきっかけでふと力が抜けたりすると、今度は副交感神経が急激に、かつ過剰に優位になることがあります。副交感神経は体を休息させようとする神経であり、涙腺の活動を活発にする働きも持ちます。そのため副交感神経が急に優位になると、脳が「リラックスせよ」という指令を出し、本人の意思とは関係なく涙が分泌されてしまうのです。これが、感情に関わらず涙が出る仕組みといわれています。
涙もろくなるのは、ストレスがたまっているサインのひとつです。しかし、ストレスの影響は涙だけに現れるわけではありません。下記のような兆候に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
ストレスが続くと自律神経のバランスが崩れ、体にさまざまな不調が現れます。
ストレスは心にも影響を与え、感情や思考の面でも不調を引き起こします。
わけもなく涙が出る状態が続く場合、それは単なるストレス反応ではなく治療が必要な病気のサインである可能性も考えられます。特にうつ病や適応障害では涙もろさが初期症状として現れることがあるため、自己判断で済まさず専門医の診断を受けることが重要です。
うつ病は脳のエネルギーが欠乏し、感情や意欲をコントロールする機能がうまく働かなくなる病気です。その症状のひとつとして、感情のコントロールが困難になり、ささいなことで涙が止まらなくなる「涙もろさ」が見られます。ただし、涙もろさだけでうつ病と判断されるわけではありません。以下のような症状が2週間以上、ほとんど毎日続く場合にうつ病の可能性が考えられます。
これらの症状に複数当てはまる場合は、専門医への相談をおすすめします。
適応障害は、ある特定の状況や出来事がその人にとって大きなストレスとなり、そのために心身のバランスを崩してしまう状態です。適応障害の場合はストレスの原因がはっきりしている点が顕著です。たとえば職場の異動や人間関係、転居など、生活の変化がきっかけとなることが少なくありません。そのストレスや緊張が許容量を超えてしまった結果として、涙もろさ、不安、抑うつ気分、怒りなどの情緒的な症状、寝坊や無断欠勤などの行動面での問題が現れます。
うつ病との大きな違いは、ストレスの原因から離れると症状が改善する傾向がある点です。たとえば仕事のストレスが原因であれば、休日や休暇中には気分が楽になることがあります。しかし根本的なストレス源である生活や仕事の環境が解決されないかぎり症状はくり返し現れるため、原因となっているストレスを調整し、環境に適応しやすくするための継続的なサポートや治療が必要です。
ストレスによる涙は、心身が休息を求めているサインです。つらいときは無理をせず自分をいたわることを考えましょう。ここでは、自分でできる具体的なストレス対処法を紹介します。
特にこれらの方法は乱れた自律神経のバランスを整え、心を落ち着かせる助けになります。無理のない範囲で、できそうなことから試してみてください。
意識的にリラックスする時間を作ることは、過剰に働いている交感神経を鎮め、副交感神経を優位にするために効果的です。
自律神経のバランスは、日々の生活習慣と密接に関係しています。特に「睡眠」「食事」「運動」といった生活リズムを守ることが、心身を整える土台となります。
一人で悩みを抱え込んでいると、ストレスはどんどん大きくなっていきます。自分の気持ちや状況を言葉にして誰かに話すだけでも、心は軽くなるものです。これは「カタルシス効果」と呼ばれ、心の中にある不安やイライラを吐き出すことで感情が整理され、気持ちが落ち着く心理的な効果を指します。話しているうちに、自分の考えがまとまって問題解決の糸口が見つかることも少なくありません。まずは家族や親しい友人など、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
身近な人には話しにくいと感じる場合は、専門のカウンセラーや相談窓口を利用するのもひとつの方法です。専門家には守秘義務があるため、安心して悩みを打ち明けることができます。
セルフケアを試しても涙が止まらない、または心身の不調が改善しない場合は、一人で抱え込まずに専門の医療機関に相談することを検討しましょう。どのような症状があれば受診を考えるべきか、また何科にかかればよいかといった具体的な目安を解説します。病院に抵抗がある人もいるかもしれませんが、専門家は話を聞く訓練を受けており、相談内容の秘密は守られますので安心して相談できます。早期の受診が症状の悪化予防や、早期回復につながります。
どのような状態になったら病院へ行けばよいのか、判断に迷うこともあるでしょう。ここでは、専門家への相談を検討すべき症状の具体的な目安を挙げます。これらはあくまで目安ですが、自分や周りの人が当てはまっていないか、ひとつの基準として確認してみてください。
これらのサインは、心身が限界に達している可能性を示しています。無理をせず専門家の助けを借りましょう。このほか、リストに当てはまらなくてもつらいと感じるときは専門家に相談することが大切です。
心の不調を相談できる主な診療科は「心療内科」と「精神科」です。それぞれの特長は以下のとおりです。
どちらを受診すればよいか迷う場合は、まずはお近くの心療内科に相談してみるとよいでしょう。またかかりつけの内科医に相談し、適切な専門医を紹介してもらう方法もあります。初めて受診する際は、事前に「いつから、どのような症状で困っているか」「きっかけとして思い当たることはあるか」「日常生活でどのような支障が出ているか」などを簡単にメモしておくと、医師に状況を伝えやすくなります。